池尻の路地裏に

これまで何度かガイド記事で紹介をさせていただいた赤坂のコムアラメゾン。開店当初、誰もいないカウンター席で、こんなに旨い料理出すのになんでガラガラなのか!!と愕然としたことが遠い昔のようだ。今は、頑固実直なシェフの腕と深夜営業人気が重なり連日そこそこ盛況が続いている。僕はとても嬉しい。

池尻
自然に和む素朴なインテリア
そのコムアラメゾンの一番たいへんだった時期にサービスを担当していた有馬氏が2005年3月、池尻に小さなブラッスリーを出した。まだ物件を探していたときにお会いしたが、目標を持つ人特有のギラギラした表情が今も脳裏に焼きつく。ホントはすぐに駆けつけなくてはいけなかったのだが、なんだかんだでこんなに遅い時期になってしまった。すまん、有馬さん。

以前は居酒屋だったその店内は15坪ほど。ほとんど居抜き状態で借り受けた店内は、見事に日本的ブラッスリーに変わっている。カウンターには素敵な女性が一人ワイングラスを傾け、テーブル席では若いカップルが賑やかに笑う。その間にシェフとサービスの2人が重ならずにバランスよく見え隠れする。そういえばこんな落ち着いたブラッスリーもあったなあ、パリの下町に、それもここと同じようにちょっとした路地裏に。


トマト
爽やかな味わいが食欲を盛り上げる
ブラッスリー・イブローニュ。「酔っぱらい」のいう意味のフランス語だ。意訳すると「飲兵衛天国」といったところか。場所は池尻の駅東口からほんの数分。その夜、僕は昔好きだった人に久しぶりに会いに行くかのようにワクワクした気持ちでいた。

店内は長いカウンターとテーブル席が4つほど。シェフの有馬裕孝氏とサービスの佐野紀世彦氏2人で切り盛りする、まさに地元のブラッスリーだ。ブラッスリーと名乗るからにはちゃんとビールも生やギネスなど数種類、その他ドリンク類も結構豊富に揃っている。外からは巨大なパン・ド・カンパーニュやハモン・セラーノが見えて、歩く人の多くが店内を覗き込む。すぐに佐野氏がショップカードを持って玄関へ走る。


フレンチ
素朴な味わいの鴨のコンフィ
ビストロやブラッスリーはシェフやサービスの顔が見えなくてはいけない。

いらっしゃいませの代わりに「こんにちは」。
ありがとうございましたの後に「おやすみなさい」。

そんな暖かみを感じる飲兵衛天国、イブローニュ。近所の人が自家製のハムを挟んだサンドイッチを買いに来る。遅くまで仕事をしている人が夜食を食べに来る。開店して半年も経たないが、少しずつ地元の空気に溶け込んでいるようだ。