原宿のはずれに
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思いのほか重厚なエントランスドア |
寺園香さんという方がいる。たいへんなグルメな方で、都内のフレンチレストランはほとんどすべて食べ尽くし、多くの情報を持っている貴重な友人の一人。料理のみならず文化的知識から料理人やスタッフのコネクションにも精通していて話をしていて新鮮で飽きることがない。さらにその美貌とあっけらかんとした性格に多くのファンがいるということも頷ける。
さて、そんな訳で定期的に彼女を囲む食事会があったりするのだが、この秋に開催されたレストランが今回ご紹介するラルテミス・ペティヤントだ。実は少し時間が経ってしまっている。いつもなら気に入ったところならすぐに書くのだが、ちょっとしたタイミングのズレがあり年末のこの時期のご紹介となってしまった。
原宿の駅からは少し歩くことになる。明治神宮駅も使えるがこれも少し歩く。千駄ヶ谷駅も使えないことはないがこれも徒歩10分以上はかかるだろう。要はその3駅の中間点なのだ。ラルテミスは明治通りから少し入ったあたりにトリコロールの国旗をかざし、ひときわ明るい光を放っている。辺りには飲食店も思いのほか多く、寂しいエリアでは決してない。
妙に居心地のいいバランス感
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革張りのメニューブックなどディテイルにもこだわりが |
大きな木の扉を開けるところからラルテミスでの時間が始まる。シェフの得意料理を前面に出したメリハリ感のあるメニュー、ウィットの効いたワインリスト、ソツのない、でもホスピタリティの感じられるサービス、それを包みこむ自然なフランスの風を漂わせる店内の灯り。ワインに例えると極上のグランヴァンではないがバランス感がよく後味も心地よく残るインプレッシヴなものというあたりか。
シェフの中田雄介氏は30代前半ながら自分の持ち味を存分に出しているといっていい。その基礎は6年勤めていたという渋谷の歴史あるフレンチ、ラブランシュの血を受け継いでいる。その後本場フランスのレストランで経験を積み帰国、そのままラルテミスの料理長に。また、サービスにあたる塩見和彦氏は銀座のオストラルなどを経て支配人を務めている。街場のレストランの中ではフランス的なホスピタリティを持つプロフェッショナル意識の高い方とお見受けした。
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ほっとする最初のひとくち |
冒頭の寺園さんを囲む5人の食事会はいつものようにメニューやワインを決めたりするのにワイワイガヤガヤとした時間を流し続ける。プリフィクスの場合だと私など、決めたと思ってもいざオーダーとなると心変わりしてしまうことも。5人~6人だとワインは3~4種類選ぶこともでき、特にシャンパーニュはボトルでオーダーできるので最も楽しめるスタイルではなかろうか。料理はどうするの?これもよさそう、あれも気になる、ワインは?白にする?赤はどっち?ブルゴーニュ?ボルドー?それともローヌ?そうなると料理は同じものにしなさい!と言いたくもなるのだがそうはなかなか。まあ、そんなこんなもフレンチの楽しさのひとつ。塩見氏はにこやかに傍に佇み、時折この我侭な客達にさりげなくアドバイスを授けてくれる。