フレンチ/東京のレストラン

落ち着いた大人の空間で美食を極める。 ラ・ビュット・ボワゼ

歴史を感じさせる日本家屋の佇まい、軸のぶれない創造的料理の数々。いつ訪れても安心できる日本版グランメゾン、ラ・ビュット・ボワゼ(自由が丘)。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

このレストランについてはクリスマスにお薦めレストランとして「さらりと」公開したのは昨年11月のこと。内容が薄い!と自ら反省し、その後2度ほど食事に出掛けた後、再度取り上げることとした。

自由が丘と田園調布の間にあるこのレストランは「佇む」という言葉がぴったりと静かな住宅街にある。特に目印もなく、唯一玄関の階段下に小さなプレート看板があるだけ。近隣の住宅に配慮したのであろうが、ここの場所にはフランス国旗すら似合わない気がする。

れっきとした日本家屋をレストランに仕立ててあるが、過度に手を加えることなく、「昔のおうち」そのままの雰囲気を保っている。坂の途中にある門から玄関までは緩やかな石畳の階段を上る。高貴なご家庭に招かれた、そんな気持ちにさせてくれる落ち着いたアプローチだ。ワクワクドキドキというより「ほっとする」空気が流れている。


玄関右手は待ち合わせなどに使われるサロン。ワインセラーが埋め込まれ、中からは珠玉のボルドーワインが静かに眠る。シャトーマルゴーのコレクションは相当なものがありそうだ。ただしワインリストは銘柄、価格ともにどちらかというと面白みに欠けるもの。ワイン選びに苦労することになるかもしれないが、逆にソムリエに相談するのも面白い。

さて、もう一昨年の話になるがこのレストランで開かれた友人の結婚式の婚礼料理は未だ忘れることができない。香り立つ野菜を引き立たせた繊細な前菜。どっしりとしたメインディッシュ。美しさと味わいを完璧なまでに融合させたエンディングのデザート。花嫁の美しさをさらに引き立たせ、慶びを表すまさに至高の料理とはまさにこのことか。


ダイニングからは小さな庭が美しく映える。特に桜の季節はほんとりと彩る薄桃色の花を眺める価値は十分。秋は枯葉の絨毯でも見られるのだろか。雪の日に当たったらどれほどの美しさだろうか。。。想像は尽きない。季節を感じながら料理と向き合えるレストランであることは間違いない。ちなみに桜のシーズンは予約で一杯だそうだ。

前菜の盛り合わせというと、記憶に残らないピンチョスが並ぶことが多いものだが、一つ一つの味わいがお互い重なり合い小さなストーリーが創られる。オマールの小さなスープを口にした時のサプライズ感も楽しい。これまでテレビで有名な人気店といわれるところで見た目に美しい前菜に随分落胆したものだが、ここでは小さな驚きが見事に散りばめられている。
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