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凛として、かつ優しい料理と言う作品の数々を。 Xmas<ラ・ビュット・ボワゼ>

自由が丘の住宅街にある日本的な邸宅。素朴な佇まいの奥には長く愛される森重キュイジーヌの世界が広がる。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

世田谷は奥沢の高級住宅街。近くには自由が丘、田園調布など品のいい街並みが広がる。都心からは少し離れているせいか、繁華街の「ハレ」度加減とは少し趣の異なる時間を過ごすことができるかも知れない。

ラ・ビュット・ボワゼ。ここは近隣の住宅に溶け込み外観からはレストランであることを主張していない。ゆるやかな石畳の階段を上ると玄関があり、その佇まいも控えめだ。

森重正浩シェフの料理は香草の魔術師と言われた三ツ星シェフ、マルク・ヴェイラの料理から多くの影響を受けた繊細な作品と言える。オーベルジュ・ド・レリダンやピエール・ガニェールなどの名店で腕を磨き、箱根のオーベルジュ・ド・オーミラドーでもその腕を振るった経歴を持つ。純朴な人柄は山に潜む薫り高き香草の如き、と言っては失礼だが、一人一人の顧客にしっかりと頭を下げる謙虚さは、この時代尊敬に値する。

住宅街故にクリスマスの時期であろうとなかろうと辺りはいつもと同じ。しかし日本家屋たる店内は気品に溢れた森重シェフの世界が広がる。本来持つ野菜の香り、や色あいが調理と言う技術を介して皿に彩られる。肉料理にしても同じ。自然の恵みを感じられる料理の数々は楽しい時間を過ごす二人の会話をさらに盛り上げてくれるだろう。

ホームページには「彼(ヴェイラ)と共にアヌシー山麓の野山をかけめぐり、山草・香草を採取したその時の楽しい経験と思い出が森重の料理の根底をなす。」とある。今もスタッフと共に山に入り野草を摘むことがあるそうだ。そんなところに料理の基本があるように見えてならない。

秋が深まりそろそろ華やいだクリスマスが来る。銀座でショッピングした後は地下鉄で足を延ばし、自由が丘へ。その先には主張がはっきりとした優しい料理と、特筆すべきデザートまで、ごく平凡な外観をもつ日本家屋の店内は素晴らしい時間が待っている。

ラ・ビュット・ボワゼからはすでに多くの料理人やサービスを世に輩出してることもぜひ述べておきたい。
新富町のラ・ブリーズ・ドゥ・ヴァレは言うに及ばず、西麻布のファランドールは大人の食べ歩きガイド、伊藤氏の記事の通り。最近では銀座に開店したナルカミなど森重DNAはゆるやかに拡散中といったところか。キーワードは「気品」。緩やかな雰囲気の中にも凛とした料理が楽しめるレストランばかりだ。

普通だとラ・ビュット・ボワゼに行くにはどこぞの駅からという道順を書くこともあるが、ここはクリスマスのハレの日。自由が丘もしくは田園調布からタクシーで向かいたいところだ。クリスマスメニューは予約時に直接お店にご確認いただきたい。

ラ・ビュット・ボワゼ
世田谷区奥沢6-19-6
03(3703)3355
12:00~14:00/18:00~21:00/月休
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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