以前勤めていた会社の後輩からお祝いの案内が届いた。奴ももう3年目、厳しいIT業界の中でコンサルタントとしてしっかり仕事をしていることは風の便りできいてはいた。おめでとう、いいタイミングじゃないか!
会場はホテルでもなく、レストランでもない「ネプシス」。渋谷はインフォスタワーの近くにあるが、地図を持っていてもわかりづらいエリアにある。真ん中にプールがあり開放的な空間を最大限に利用したイマドキのウエディングスポットだ。料理はどうやらフレンチらしい。でもちょっと待てよ、「結婚式のフレンチってどうせろくなものは出ないのだろう」と勝手な先入観を持ってしまっていた。ありきたりのテリーヌと冷凍海老をオーブンで焼いたものが出るという記憶しかない。
綺麗にテーブルセッティングされた上にはメニューがさりげなく置かれている。
■ブルターニュ産オマール海老と野菜のマーブル仕立て
■山形産天然クレソンの冷製スープ
■天然スズキのラタトゥイユ添えバルサミコ・モデナ
■山形牛肉のポワレ ジロル茸入りマディラ酒ソース
うーん、前菜のオマールが楽しみだなと思いつつ、式は進行し乾杯を迎える。スペイン産スパークリングワインのキレが素晴らしい。
「ブルターニュ産オマール海老と野菜のマーブル仕立て」は夏の季節感を生かしたフレッシュな野菜とゼリーの組み合わせがさわやかな食感を醸し出す。オマールの味わいもまずまずうまく溶け込み、スパークリングワインとの相性はなかなかのものだ。
その後魚料理、肉料理と進むが、どれも非常にうまい。特にスズキは素材自体が非常に新鮮で、身のしまり具合も申し分なく、ラタトゥイユや軽めのバルサミコソースとの間で幾重もの味わいを楽しむことができる。ただ肉料理はボリューム的にもう少しのインパクトが欲しかったと思うのはすこし贅沢か。
結婚式、披露宴は確かにこれまで随分と経験はしてきたが、上述のとおり食べたもの、つまり料理に関する「おいしい記憶」はほとんどない。それは幸せな2人のお祝いの席なので食事に焦点が定まらないといったことはあるだろう。とは言えゲストのほとんどの時間は食べるか話すしかない。
ただし幸いなことに近年伝統的婚礼料理は大きく変ったといえるだろう。5月に出席させていただいた友人の結婚式は自由が丘のフレンチ、「ラ・ビュット・ボワゼ」であった。非常に工夫された美しい料理がいいタイミングでサービスされるのを見て、お祝いの席の料理は新婦の美しさと同じくらい記憶に残るものでなくてはならないと改めて感じた。
これからさらに幸せを深める2人とおいしい料理とワイン、そしてそれを祝福するゲストによって私はこれまでの披露宴で初めて経験する4時間半という時間を過ごすことになった。それがあっという間に過ぎたのは幸せな2人の表情と、美しく繊細な料理の組み合わせのなせる技かなと思い、とても満足な気分でお祝いの席を後にした。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。