フレンチ/東京のレストラン

アピシウス(有楽町)(2ページ目)

フレンチ好きでもなかなか行く機会がないいわゆる「グランメゾン」。敷居が高そう、ドレスコードがねえ、でも食は文化体験でもあります。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

私が自信を持って選んだのは「ブルゴーニュ1998 ベルナール・デュガ・ピイ」。力強さと繊細さを併せ持つ、このクラスでは秀逸なワインである。状態も非常によく、ワインのサービスも申し分のないものであった。ACブルゴーニュクラスのワインはプルミエクリュやグランクリュに比べて保存状態でその優劣がはっきりでやすいだけに注意が必要だ。このワインは完璧な状態であったといってよい。

考えてみると、日本を代表するグランメゾンのワインリストに金額が1万円以下でも、そのクラスで最高のものをオンリストにすることはまさにソムリエの腕の見せ所。高いワインはそれなりにウマイが、低価格のワインはどんな銘柄を揃えているかを観察することはソムリエの姿勢、さらにはレストランの考え方が見えるようで非常に興味深い。

料理は素材の持ち味をメリハリの効いたソースでしっかりと形作られたものであった。スペシャリテと聞いていた「アオウミガメのコンソメスープ」は色合いを見ると普通のコンソメ。しかしその味わいは舌にまったりと絡みつく不思議な食感なのだ。こんな経験は初めてかもしれない。ただパンのバリエーションがなくそれがとても残念。

サービスは良く言えば、上品。悪く言えばそっけない感じ。しかし心地よく酔いが回り出したデザートの頃にはソムリエールの女性とワインや料理の話に花が咲いて、プティフールをつまみながらついつい長居をしてしまった。
その日は平日で、接待めいた方々もいたが、家族連れ、女性同士、カップルと意外に幅広い客層であった。


座った椅子から眺める店内の雰囲気は、ゆったり感を醸し出すまさにグランメゾン。3か月経っても鮮やかに記憶が蘇る経験であった。「アピシウス、どうだった?」と聞かれれば簡単にこう答える。「ゆったりと食事ができて、予想以上に良かったよ。」と。

ちなみに以前総料理長をされていた高橋徳男氏は99年4月より神田でスープデリの専門店「パ・マル」を開店した。この素晴らしさは改めて書こうと思っている。
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