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アスリート天国!アディダス本社訪問記(3ページ目)

アディダスと契約した三村仁司氏が、アディダス創立地ドイツ・ヘルツォーゲンアウラッハにあるアディダス本社を訪れた。技術・開発スタッフと意見交流し、アディ・ダスラーの息吹に振れた。

谷中 博史

執筆者:谷中 博史

ジョギング・マラソンガイド

アスリート天国の本社環境

本社スタッフと意見交換
本社スタッフと意見交換
長い廊下一面に生地サンプルが展示されていた
長い廊下一面に生地サンプルが展示されていた
スタッフミーティングで挨拶
スタッフミーティングで挨拶
続いて三村氏は本社の開発部門を訪問し意見交流をおこなった。本社の開発部門は、いわば素材を形にするところ。日本人も3名(開発は2名)が本社社員として常駐するほか、入れ替わり立ち替わりでアディダス・ジャパンのシューズ開発担当者が日本から訪れる。これは日本に限らない。年に一度は世界から500人が集結するという。

開発棟では、スタッフ一人ひとりの仕事振りを見学し説明を受けた。3Dモーションピクチャーをコンピュータ解析した画面でシミュレーション、デザインはコンピュータ上だけではなく、実際の生地見本が廊下にずらりと展示されており、希望すればすぐに用意されて試作できる。テストセンターほど大がかりではないが耐久性などについてのテスト設備も完備されている。

三村氏にスタッフも敬意

テストセンター内はさすがに撮影禁止だったが、ここではどこでも撮影OK。この風通しの良さが53カ国から集まるスタッフに活力を与えているのだろう。

研究棟の一画で三村氏をまじえてのミーティングがもたれた。ボスを中心に技術部門だけでなくマーケティング部門、デザイン部門などのスタッフが一同に会してのミーティングだ。三村氏の経歴が紹介され、三村氏が挨拶したが、どのスタッフも三村氏のことは先刻承知の様子だった。しかし、高橋尚子さん、野口みずき選手の金メダルシューズだけでなく、リロイ・バレル、ジョナサン・エドワード、ロサ・モタ、イングリッド・クリスチャンセンら、世界中のトップアスリートのシューズを手がけてきた経歴に改めて敬意を表している様子が感じられた。

アスリートは工夫好き

アディダスラー像と並んで、少し面はゆいような表情
アディダスラー像と並んで、少し面はゆいような表情
人間機関車ザトペックが使用したスパイクシューズ
人間機関車ザトペックが使用したスパイクシューズ
皇帝ベッケンバウアーが使用したサッカーシューズ
皇帝ベッケンバウアーが使用したサッカーシューズ
公園のようなアディダス本社には、第二次世界大戦後に連合軍に接収されたかつてのアディダス本社棟をはじめとし、ホテル、テニスコート、スタジアムなどさまざまな施設がある。それらの会社施設を利用したり、周辺は絶好のランニングコースだらけだから、ランニングをしたりサイクリングをしたりとスポーツを楽しむ。そういえばアドルフもスポーツ好きだったし、三村氏もかなりの成績を残した長距離ランナーだった。

筆者は、アスリートと職人には大きな共通点があると思っている。それは、工夫することが好きだということだ。運動で成績を上げようと思えば工夫が必要だ。練習時間が同じなら工夫した練習を行った者が勝つ。物作りにも欠かせないのは工夫だろう。マラソンランナー三村氏が現代のスポーツシューズ造りの名工になった素地は、マラソン経験が競技に対する理解を助けたという意味だけではなくて、工夫の余地が多いマラソンという競技の選手であったことも大きな要素だったのではないかと密かに思っている。アドルフにしてまた然りだったのではないだろうか。

アディダスのスピリットに触れる

アディダススタジアムはサッカーのワールドカップドイツ大会時にアルゼンチンチームがキャンプ地とし、現在のドイツチームもよく使用しているらしい。ベンチにはアディダス創立者のアドルフ・ダスラーがトラック&フィールドの選手を見守っている。三村氏にとって、スポーツシューズ開発の開拓者であり先駆者であるアドルフは畏敬の対象でもある。カメラマンに肩を組むポーズを要求されたが、いささか照れくさそうにとまどっていた。

コンベンションホール(非公開)の回廊には、アディダスミュージアムともいうべき貴重なアディダスの歴史を物語る品が展示されている。人間機関車の異名をとったエミール・ザトペックのスパイク、皇帝ベッケンバウアーのサッカーシューズなどアディダスの結晶ともいうべき作品や、工房でのアドルフの写真などが数多く展示されている。それらの展示物に見入る三村氏の心がアディダスの精神と融合していくように見えた。
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