東京マラソンをうまく走りきるヒント
東京マラソン2008までジャスト1ヶ月。直前1ヶ月の過ごし方は「まだ間に合う!東京マラソン最終1ヶ月対策」でご紹介しました。今回はどんなペースで走ったらよいのか。ペース設定の方法を、4人の市民ランナーと上位入賞者の記録を例にご紹介します。あなたの持てる走力を効率的に使って好記録を生み出すペース配分設定法です。紹介する4人の市民ランナーはいずれもランニング経験豊富。フルマラソンは何度も完走しています。当然、東京マラソンがどのようなレースになるかを想定し、それに備えて準備をしてきました。もちろん当日の悪天候も予想してウエアを決め、当日のレースに臨んだわけですが、結果はさまざまでした。
4人がどのように考えてレースに臨み、どのように展開し、その結果はどうだったのかお伝えしましょう。そこにはきっと東京マラソンを「うまく走りきるヒント」が含まれているでしょう。
練習不足も食べ物とゆとりスタートで成功
ペースもさることながら、寒さ・雨天対策も快走の決め手になった前回大会 |
A・Hさんは47歳。ランニング暦は25年に達し、すでにフルマラソンを27回完走しているベテランです。着々と準備をすすめ、トレーニングも順調でしたが、3ヶ月前から肉親の危篤状態が続き、大会2ヶ月前にお亡くなりになったこともあり、走り込み期に十分に走りこめないどころか、12月は100km余りしか走ることができませんでした。
そんなことで東京マラソンも完走が第一目標だったとのこと。気楽な気持ちでの挑戦です。少しアドバンテージになったのは、コースを2回試走していたこと。ポイントになる35kmからのアップダウンがどのようなものかよくわかっていました。
当日の朝食はいつものようにスタート3時間前におにぎり3個。会場についてから1時間前に参加者にサービスされたブースで、バナナ2本とパン1個を口に。
ウエアは、ランパン、ランシャツ、アームウォーマーに雨風対策のビニール袋(用意していったが、主催者が配ったビニール袋を使ったそう)、それに手袋が濡れるのを防ぐため、手袋の上から家事用の薄いビニール手袋を着用。アームウォーマーとビニール手袋はとても役だったそうです。
雨ということもあってウォーミングアップ走はまったくなし。スタートは、陸連登録者ということで比較的前からだったのでスタートロスは25秒で済みました。
全体的には最初の5kmの下り坂、それに続く平坦部でスピードが上がり過ぎないように気を付けました。あとは淡々と。疲れてくる銀座は大応援で元気づけられました。
給水は寒かったので控えめでしたが、それでもちょこちょこと少しずつ摂取。給食のほうもよく食べました。バナナやパン。パンは3つぐらい食べたとのこと。
それでも30kmを過ぎるとちょっとくたびれましたが、試走をしていてこの先がどうなるのか分かっていました。佃大橋が最初の頑張りどころ。周囲のランナーに遅れないようにペースを保持。追い風になってもいたので、小刻みなアップダウンも無事こなし、ゴールにたどり着けるような力の配分で頑張りました。
ラップタイムを見てみましょう。
地点名 | スプリット | ラップ | 所要時間比率 |
5km | 0:23:40 | 0:23:16 | 11.93% |
10km | 0:45:49 | 0:22:09 | 11.36% |
15km | 1:08:02 | 0:22:13 | 11.39% |
20Km | 1:30:34 | 0:22:32 | 11.55% |
25Km | 1:53:27 | 0:22:53 | 11.73% |
30Km | 2:16:42 | 0:23:15 | 11.92% |
35km | 2:40:36 | 0:23:54 | 12.25% |
40km | 3:04:46 | 0:24:10 | 12.39% |
Finish | 3:15:03 | 0:10:17 | 5.27% |
最初の5kmはスタートロスを25秒含んでいますから、ネットは22分50秒程度です。下り坂がありますが抑えめに入っています。一番速い10kmと遅い40kmの差が約2分。1.09倍ですから、1割弱ペースが遅くなっています。しかし、ゴールをしてみると自己新記録。練習不足だったのでまさか自己新が出るとは思ってなかったとのことですが、ラップを見るとうまくいってるなと思います。
東京マラソンコースはゴール地点がわずかながらスタート地点より低く、風も追い風気味なので、本来記録が出やすいコースのはず。このコースで曲者は前半の下り坂と、最後のアップダウンだということがわかります。
余裕を保っておいて後半を粘って成功
銀座の真ん中を走れる喜びに元気もわいた |
当日の朝食は、4時間前にご飯をたっぷり、2時間前、1時間前、30分前に餅、バナナ、カロリーメイトなどを摂りました。
AHさん同様にウォーミングアップはなし。ウエアは、下はランパン、上はTシャツとランシャツの重ね着に大会本部が配ったビニール。しかし、これでは寒かったそうです。もっと防寒対策をとれば良かったと述懐しています。
ではラップタイムを見てみましょう。
地点名 | スプリット | ラップ | 所要時間比率 |
5km | 0:25:20 | 0:24:17 | 12.03% |
10km | 0:48:46 | 0:23:26 | 11.61% |
15km | 1:11:46 | 0:23:00 | 11.39% |
20Km | 1:34:50 | 0:23:04 | 11.42% |
25Km | 1:58:19 | 0:23:29 | 11.63% |
30Km | 2:22:24 | 0:24:05 | 11.93% |
35km | 2:47:00 | 0:24:36 | 12.18% |
40km | 3:11:43 | 0:24:43 | 12.24% |
Finish | 3:21:54 | 0:10:11 | 5.04% |
最初の5kmではスタートロスが1分程度あったようです。前述のA・Hさん以上にいい感じで走ってますね。30~35kmでちょっと落ちましたが、そのまま落ち続けるのではなく35~40kmは前の5kmとそれほど変わりません。そしてラストの2.195kmのタイムは、A・Hさんより速いくらいです。前半抑えたのがこの余力につながっているようですが、本人はまだ前半が速すぎたと言っています。10kmぐらいになって体が温まり、目標の3時間15分達成のためにスピードを上げたのが30km以降に疲れになって出たと分析しています。
もうひとつ、途中で給水はこまめにしていたものの、給食を摂らなかったのも失敗だったといっています。でも、銀座や浅草の大応援に感激して頑張れたとのこと。応援や風景を励みにして気合いを入れて走ったそうです。最速区間の15kmまでと最遅区間の40kmまでを比べると1.07倍なので、A・Hさんよりいいくらいです。「この最悪のコンディションの中ではいいタイムだった」と納得しています。
東京マラソンのコースは前半に下り坂、最後にアップダウンがありますから、イーブンのつもりで走ってもタイムは前半が早くなって当然。N・Sさんのペース配分は理想型に近いかなと思います。