ジョギング・マラソン/ジョギング・マラソン関連情報

マラソンペース配分と100m走との共通性(2ページ目)

100m走でもマラソンでも、ポイントは距離にして70%の地点にあり。これを頭に入れておくと記録も出しやすくなります。世界陸上大阪の女子マラソンを取り上げて検証してみました。

谷中 博史

執筆者:谷中 博史

ジョギング・マラソンガイド

70mの壁!?を克服せよ

5kmごとの1kmあたりの速度をグラフ化すると、最後にヌデレバが傑出したスピードで走っていることがよくわかる
世界大会大阪の男子100mは、1位タイソン・ゲイ(9秒85 アメリカ)、2位デリック・アトキンス(9秒91 バハマ)、3位アサファ・パウエル(9秒96 ジャマイカ)の順でした。レースは、ほぼ同時のスタートからパウエルが飛びだし50mまでは断然リード。そこから勢いが衰え50mを過ぎたところではゲイに並ばれ、最後にはゲイに引き離された上にアトキンスにも抜かれてしまいました。この50mと70mという地点が、とても暗示的だと思います。

50mをマラソンに置き換えれば中間点。約21.1km地点です。エリートレベルの大会なら、まだトップグループの塊が残っていますが、その中身をみると、疲労を感じながらなんとか頑張って付いている選手も含まれるような地点です。

今回の女子マラソンでもペースが遅いせいか、序盤のトップグループの数は27、8名と多かったですが、個々を見れば20kmを過ぎると一人ひとりの疲労度はかなり違っていたでしょう。それよりも後ろだったキャサリン・ヌデレバ(ケニヤ)は、男子100mのゲイのように後ろからトップをうかがうな位置取りでした。後続集団にいたヌデレバがトップ集団に追いついたのは中間点を過ぎてから。そこでのトップグループはまだ約20人もいました。ところが30kmでは半減して10人。そして40kmでは一気に4人に減りマッチレースが始まるわけです。

70mが30kmの壁に

100m競走の70mをマラソン倍すると、29,536.5mと約30km地点に相当します。いよいよ30kmの壁にさしかかり、ここまでに実力以上のスピードで走ってきたり、調整がうまくいっていないとか走りこみ不足の選手はずるずると取り残されるポイントです。30kmからゴールまでを落ちこみなく走れる選手は、それだけの実力が備わっているとともに、その実力に見合ったペースで走ってきているといえるでしょう。

世界陸上大阪の女子マラソン、上位3選手のスプリットタイムは次のようになります。

スプリットタイム
ヌデレバ周春秀土佐礼子
5km18.33(3.42.6)18.27(3.41.4)18.27(3.41.4)
10km36.27(17.54)(3.34.8)36.23(17.56)(3.35.2)36.23(17.56)(3.35.2)
15km54.31(18.04)(3.36.9)54.27(18.04)(3.36.9)54.26(18.03)(3.36.6)
20km1.12.38(18.07)(3.37.4)1.12.34(18.07)(3.37.4)1.12.34(18.08)(3.37.6)
25km1.30.51(18.13)(3.38.6)1.30.51(18.17)(3.39.4)1.30.50(18.16)(3.39.2)
30km1.48.31(17.40)(3.32.0)1.48.30(17.39)(3.31.8)1.48.30(17.40)(3.32.0)
35km2.06.12(17.41)(3.32.2)2.06.12(17.42)(3.32.4)2.06.12(17.42)(3.32.4)
40km2.23.37(17.25)(3.29.0)2.23.37(17.25)(3.29.0)2.23.39(17.27)(3.29.4)
GOAL2.30.37(7.00)(3.11.3)2.30.45(7.08)(3.15.0)2.30.55(7.16)(3.18.6)
※5kmの()内は1kmのタイム。GOALの()内は、左から2.195kmと1kmのタイム。そのほかは5kmと1kmのタイム

この表からもわかるように、土佐が大きく離されたのは残りの2km少々です。100mレースで言えばゴールまであと残り6mという地点です。最後の6mにおける力の差が金と銅の差なんですね。土佐選手も最後は粘りましたが、上位2選手の力が他の選手より抜きん出ていたことがあきらかです。
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