富士登山競走とは?

六合目付近から山頂を見上げる
六合目を過ぎたあたりから山頂を見上げる。あまりの仰角に首が痛くなる
「雲上のゴールに挑む日本最高の山岳レース」を自称する富士登山競走。毎年7月第4金曜日の開催となって、今年2007年は7月27日の開催。回を重ねて60回となる記念大会です。

60回ですよ。すごいですね。1947年、まだ戦後の混乱も治まらない時期に始まっている歴史と伝統のある大会です。歴史と伝統だけではありません。スタート地点が富士吉田市役所前、ゴールが富士山頂の浅間神社前、その標高差約3,000mと、日本一の山の日本一の標高差を一人で一気に登り切るという、この分野では日本一の大会と誰しも認めるところでしょう。

「苦しくても一度は挑戦して完走を果たしたい」と、幾度関門通過を妨げられても、この大会だけは連続挑戦しているランナーも珍しくはありません。それなりに富士登山向けの練習を積んだランナーが挑んでも、完走率が50%に達しないという過酷なレースです。またゴールは標高3,700mとあって常のマラソンレースとは異なることがいっぱい。平地では速くても完走できない、逆に平地では遅いが富士登山競走では良い成績を残すランナーもいます。何がその成否を分けるのか、富士登山競走の完走を目指す参加者のためのスペシャルガイドをお届けします。

富士登山競走とフルマラソン競走との大きな違い

富士登山競走の制限時間は4時間30分。距離はほぼ21kmとハーフマラソンの距離ですが、トップのゴール時間が2時間30分台(最高記録は2時間32分40秒)。平地のフルマラソンに比定すれば47~48kmのレースということになるでしょうか。

ところが、自分の経験からすると、フルマラソンをサブスリーで走っていたときの富士登山競走のタイムが4時間少々ですから、時間からすれば平地に直せば54~55km程度のレースということになります。これだけ、ランナーごとに富士登山競走と平地のマラソンとに違いがあります。その違いは何でしょうか。

■富士登山競走と平地のマラソンの違い
富士登山競走 平地のマラソン
登る一方、次第に急勾配 ほぼ平地、アップダウンがあってもわずか
コース中盤から足場が悪い ほぼ全コースが舗装路
コース後半は酸素濃度が薄い 酸素濃度が薄くなることはない
気温変化が激しい、下がる一方 一般に次第に気温が上がる

まずこの違いを想像するだけなく、なるべく体で感じてそれに応じた対策を施すことが富士登山競走完走につながるように思います。

21kmの距離で3km登る勾配

まず富士登山競走の登りとはどのようなものなのかを、見てください。
地点 距離 標高
スタート 富士吉田市役所   670m
11km 馬返し 11km 1,450m
15km 五合目 4km 2,250m
17.5km 七合目 2.5km 2,700m
19km 八合目 1.5km 3,360m
21km ゴール 2.0km 3,700m
グラフにするとこのような感じ。その角度が富士登山競争の厳しさを物語る

ここでちょっと東京~箱根大学駅伝の過酷区間といわれる、箱根山に挑む第5区の登りを見てみましょう。

小田原で中継し、本格的な上り坂が始まるのは箱根湯本駅前からです。ここから最初のピークである芦之湯手前の高みまでが12kmほどで、その標高差は約750mですから、ほぼ馬返しまでと同等といってよいでしょう。しかし富士登山競走では、馬返しまではほんの序盤なのです。

完走率は50%に満たず

馬返しから五合目へ
馬返しまでは舗装路。そこから山道になるが整備はいい。森林の中で暑さもしのげる
山頂直下から見下ろす
山頂直下から今しがた登ってきた山肌を見下ろせば、幾重なりにもなった選手が制限時間と闘っている
富士登山競走の完走率は、大変低く昨年2006年は44.9%でした。参加者が増加しており、完走率はさらに下がる可能性もあります。これは昨年開催された東京国際マラソンの完走率64.4%よりも低い数値です。過酷をうたわれた北海道マラソンでも52%でした。ちなみに、今年の東京マラソンの完走率が96.3%ですから、いかに完走が難しいかがわかります。

関門は五合目、八合目の2ヶ所にあります。五合目で制限時間(2時間20分)をオーバーする人は、走力がまだまだということ。しかし、八合目の関門(4時間)を通過できない人の中には、平地でのレースなら完走者にも負けないような実力を持っている方も少なくありません。それがこの富士登山競走の特異性といえるでしょう。完走が難しいだけに、雲を突き抜け時間内に富士山の山頂を極めたときの喜びは想像以上のものがあります。その喜びを出場される一人でも多くの人に経験してもらいたいと思います。

五合目通過は、2時間8分が境目

五合目の制限時間はこれまで2時間30分でしたが、10分短くなり2時間20分となりました。では、五合目をどのくらいのタイムで通過できれば完走の目処が立つのでしょうか。完走者のタイムを調べると、2時間8分以内で通過している人で完走できなかった参加者と、2時間8分以上かかって通過しても完走できた参加者の数がほぼ等しいようです。つまり、2時間8分で通過すれば完走の可能性はほぼ50%というわけです。2時間10分かかると完走率は3分の1くらいに。2時間で通過すれば完走の可能性はぐんと高まります。しかし、現実に2時間20分ぐらいで通過して完走した参加者もいます。制限時間ギリギリで通過しても完走を諦めることはありません。

八合目通過には気をつけましょう。というのは、八合目の表示がいくつもあるのです。手前の八合目から奥の八合目まで。うっかり手前の八合目で「よしなんとか関門通過」なんてのんびりしていると、関門の八合目でひっかかるなんていうことも。「通過したと思ったのに、また八合目だ……」なんてがっかりしないでください。