超高温の軟鉄鋳造作業
ロストワックス製法で、まず型を作成 |
アイアンヘッドの材料となる軟鉄素材。このような丸棒状の素材を鋳造製法の場合、超高温で熔かして使用する |
かなり離れても「熱い」と感じるドロドロに溶けた鉄を型に流し込む |
型に流し込まれてもオレンジ色に光り続ける軟鉄素材 |
工場見学中、ゴルフクラブ製造のハイライトは、なんと入ってもアイアンヘッドの鋳造作業です。ゴルフクラブには、金属を叩いて鍛えヘッド成型する鍛造製法と、溶かした金属を型に入れ成型する鋳造製法の2種類が一般的。
本間ゴルフでは以前から鋳造製法にこだわり、「PPシリーズ」や「LBシリーズ」といった上級者にも扱える名アイアンを生み出しています。鋳造のほうが、よりマスターモデルに忠実なものができるというのが、鋳造を採用する理由のよう。現在は、「BERES TW904アイアン」を除くラインナップが鋳造製法で製造されています。
しかし、多くのゴルフメーカーが、特に上級者向けに関しては鍛造製法を採用している現状もあり、鍛造の持つメリットもあるはず。その辺を本間ゴルフ担当者の方に伺ったところ、本間アイアンの多くが、鋳造製法によって成型された後、鍛造同様にヘッドにプレスをかけて金属の組織を均一化し、組織が詰まった状態に加工するのだとか。
これは、以前紹介したピンのステンレス製アイアンでも同様の加工が行われていて、コスト増にはなるものの鋳造ヘッドの打感を良くするために効果的な作業です。鋳鍛造などと呼ばれることもあります。
鋳造によるゴルフクラブは、ロストワックス製法が一般的。マスターモデルから元型を作成し、そこに超高温でドロドロに溶かした金属を流し込みます。綺麗に型に流れ込むと、“湯流れ”がよいなどと表現されることもあるようです。
実際に、目の当たりにした軟鉄鋳造の現場は壮観。材料となる鉄の棒を炉の中で2000度近い高温にし、ドロドロに溶かします。それを手作業で正確に型に流し込んでいきます。熟練した職人さんは、丁寧に、しかし素早く鉄を流し込み、少しするとそれまで燃えるように光っていた鉄は急速に温度を下げ、材料の時と同じ鉄の色に変わっていきます。
建物の外には寒風の吹きすさぶ12月の山形で、安全のためかなり離れていても「熱い……」と感じるほどドロドロに熔けた軟鉄素材は、火花を散らしながら眩しいほどオレンジ色に輝いています。過酷な作業現場でありながら、鉄が輝きながら、型に流れ込んでいくさまをガイドはとても美しいと感じました。
本間ゴルフでは、現在、ほとんどのモデルのヘッドを外注生産しています。外注工場でも頻繁に技術指導を行い、製品開発やマスターモデル製作も全て一貫して酒田工場で行っており、品質管理には問題なさそうです。しかし、こうした鋳造風景が酒田工場から少なくなるのは、すこし寂しい気がします。