稀代のファンタジー作家
ロード・ダンセイニ
ダンセイニの〈幻想短編集成〉シリーズ第1弾。2冊の初期作品集(全33編)を完全収録した豪華な1冊である。 |
"20世紀最大のファンタジー作家"と称されるダンセイニは――とりわけ日本では――江戸川乱歩が絶賛した「二壜の調味料」の著者としても知られている。ミステリーファンには(むしろ)この短編でダンセイニを知った人も多いはずだ。乱歩が評論集『幻影城』で"奇妙な味"の佳品と論じ、後に「二壜のソース」として『世界短編傑作集3』に収めた本作では、ある怪事件の顛末が描かれている。同棲していた女が消えたにも関わらず、怪しげな男スティーガーは別荘に籠もって薪を作り続けていた。スティーガーに調味料を売ったセールスマンの「わたくし」ことスメザーズは、同居人の紳士リンリーに謎解きを持ちかけるのだが……。巧みな語り口、謎めいたムード、衝撃的な幕切れなどを備えた短編ミステリーの古典的名作である。
次のページでは短編集『二壜の調味料』を御紹介します。