片岡義男のバイオグラフィー

『花模様が怖い』
〈片岡義男コレクション〉第1巻。1978年から1994年にかけて書かれた8編のハードボイルドが楽しめる。
卓越したセンスによって独自のムードを身に纏い、華々しい業績を通じて1つのカルチャーを象徴する――そんな作家は稀に現れるものだが、片岡義男がその1人であることは間違いないだろう。

片岡義男は1940年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒。在学中から『マンハント』『ミステリマガジン』などのライター兼翻訳家として活動し、ジョーク本やブラックユーモア小説を"テディ片岡"名義で発表しつつ、創作集団"パロディ・ギャング"の一員としても活躍を見せた。1970年代前半には『ぼくはプレスリーが大好き』『10セントの意識革命』などの評論集を上梓するとともに、創成期の『宝島』編集長を(約2年間)務めている。1974年に『白い波の荒野へ』で本格的な作家デビューを遂げ、翌年には『スローなブギにしてくれ』で第2回野性時代新人文学賞を受賞。アメリカ文化にまつわるエッセイや青春小説で人気を博し、FMラジオのパーソナリティとしても才能を発揮した――そんな堂々たる経歴の持ち主なのである。

快進撃はそれだけでは終わらない。1980年代後半からは恋愛小説を手掛け、1990年代にはアメリカ現代文学の評論・紹介者としても活躍。近年は『日本語の外へ』『日本語で生きるとは』のような日本論を著しつつ、カメラマンとして(主に東京を舞台にした)写真集を上梓している。こうして概略を眺めるだけでも、その多彩な才能と変幻自在ぶりは一目瞭然だろう。そんな人物がハードボイルドを愛好していることは、ミステリーファンにとっての大きな幸運にほかならない。著者はカーター・ブラウンやリチャード・スタークの翻訳家であると同時に、スタイリッシュなハードボイルドの実作者でもあったのだ。

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