数十万人が待ち望んだ
渾身の第2長編『少女』
"人が死ぬ瞬間を見たい"と切望する2人の女子高生。彼女たちが夏休みに体験した出来事とは? 冷淡な筆致が冴える青春サスペンスの秀作。 |
そんな設定からも明らかなように、これは断じて愉快な物語ではない。死を見物するために他人に接近し、冷ややかに観察を続ける女子高生たちの感性は――『告白』の語り手たち以上に――独善的なものだ。目的のためには演技もするし、他人事よりはファッション誌のほうが大切に決まっている。しかし独善的なのは彼女たちだけではなかった。一通の遺書とその感想で幕を開けるストーリーは、乾いた感性のフィルターを通じて語られることで、ちりちりとした刺激を容赦なく読者に突きつけてくる。あえて他の作家名を挙げて言えば、乙一『GOTH』や桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『少女には向かない職業』に通じる"毒"がここにはある。力量とセンスを改めて実証したという点からも、本書が注目すべき1冊であることは間違いない。湊かなえは"本物"なのだ。
【関連サイト】
・「告白」湊かなえ…双葉社公式サイトの『告白』紹介ページ。第1章の冒頭部分が読めます。