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シャーロック・ホームズの災難続き(2ページ目)

"世界一有名な名探偵"シャーロック・ホームズは"世界一贋作の多い名探偵"でもあります。ホームズ贋作の世界を御案内しましょう。

執筆者:福井 健太

海外作家の多彩なパロディ集

『シャーロック・ホームズの栄冠』
シャーロキアンとして知られる作家・北原尚彦の編纂したアンソロジー。大御所たちの作品を中心に全24編が収められている。
原書房で邦訳されている〈シャーロック・ホームズ〉シリーズは、現役作家たちの贋作を収めた書き下ろしアンソロジーだ。刊行中の『シャーロック・ホームズ クリスマスの依頼人』『シャーロック・ホームズ 四人目の賢者』『シャーロック・ホームズ ベイカー街の殺人』『シャーロック・ホームズ ワトスンの災厄』『シャーロック・ホームズ ベイカー街の幽霊』の5冊を合わせると収録作は62編――ドイルの書いた"聖典"よりも多いわけだ。ホームズ譚の(キャラクターと形式の)応用範囲の広さを伺わせるシリーズと言えるだろう。

古典的な贋作に触れてみたい人には、論創社から刊行された『シャーロック・ホームズの栄冠』を強くお勧めしておこう。稀代のシャーロキアン・北原尚彦が編訳を務めた本書には、ミステリー史に名を残す大御所たちがずらりと顔を揃えている。ロナルド・A・ノックス、E・C・ベントリー、アントニー・バウチャー、A・A・ミルン、ロス・マクドナルド、アーサー・ポージス、オーガスト・ダーレス、ロバート・ブロック、ビル・プロンジーニ――と名前を並べるだけでも、ミステリー好きならばメンバーの豪華さに唸らされるはずだ。正統派の「王道篇」からユーモラスな「異色篇」まで、元ネタが同じだとは思えないほどにバラエティ豊かなのは、やはり"聖典"が強固だからに違いない。原典が丈夫だからこそ弄られても壊れないのである。

ホームズで遊ぶ日本人作家たち

『日本版シャーロック・ホームズの災難』
書き下ろしを含む21編をテーマ別に整理し、詳細な解説を加えた国産ホームズ贋作集の決定版。遊び心溢れる構成は一見の価値ありだ。
そして2007年末――"北原尚彦編の贋作アンソロジー"第2弾が登場した。『日本版シャーロック・ホームズの災難』という書名が示す通り、こちらは日本人作家による贋作集。タイトルは先述した『シャーロック・ホームズの災難』を踏まえたものだ。荒俣宏のパスティーシュ、北杜夫のパロディ、稲垣足穂の掌編、砂川しげひさの艶笑譚、都筑道夫のショートショート、柴田錬三郎の贋作、喜国雅彦のコミックなどが雑多に詰め込まれており、内容の多彩さでは日本最高のホームズ贋作集に違いない。「ホームズをネタにして遊ぼう」という稚気を体現したような構成は――いささか読者を選びそうな怪作もあるが――シャレを解する読者には微笑ましく感じられるはずだ。

【関連サイト】
図書出版 論創社『シャーロック・ホームズの栄冠』『日本版シャーロック・ホームズの災難』の版元・論創社の公式サイトです。
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