ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

名刑事は文学ワールドを駆ける(2ページ目)

女性刑事が文学作品の世界に入り込み、有名なキャラクターたちに出逢う――そんな奇想たっぷりのSFミステリーを御紹介します。

執筆者:福井 健太

新たな奇想が炸裂する第2作

『文学刑事サーズデイ・ネクスト2』
夫を誘拐されたサーズデイは本の牢獄に閉じ込められた犯罪者の解放を決意する。この無謀な計画は成功するのだろうか?
続編にあたる『文学刑事サーズデイ・ネクスト2 さらば、大鴉』では、サーズデイは最愛の夫ランデンを攫われてしまう。サーズデイは彼を助けるため――犯人の交換条件に応じるべく――エドガー・アラン・ポーの詩「大鴉」に収容された悪党ジャック・シットを連れ出すことに。小説のキャラクターたちが住むブックワールドのミス・ハビシャムの助けを借り、サーズデイは巨大な敵に立ち向かうのだが……。幸せな日々を壊されたサーズデイと悪徳企業の闘い、小説の登場人物が集まるジュリスフィクションの設定など、前作以上のサスペンスとアイデアが盛り込まれた掛け値なしの傑作。ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』やカフカ『審判』の名場面が使われるほか、シャーロック・ホームズの兄(マイクロフト)が登場するなど、文学マニアへのサービスは今回も盛り沢山である。

待望のシリーズ最新刊がついに登場!

『文学刑事サーズデイ・ネクスト3』
愛する者を奪われ、命を狙われる羽目になったサーズデイは、文学作品の世界へ移住することになった。彼女の前に現れた新たな敵とは?
第3作『文学刑事サーズデイ・ネクスト3 だれがゴドーを殺したの?』では、著者のアイデアはさらなる暴走を見せている。前作で愛する夫を奪われ、記憶を操る怪女エイオーニスに命を狙われたサーズデイは、ミス・ハビシャムの援助でブックワールドに匿われることになった。『ロビンソン・クルーソー』の島で暮らすのも悪くない――と思うサーズデイだったが、刑事を続けることを命じられ、脇役たちのストレス解消や誤植ウィルスの撃退に忙殺される毎日。逃走したミノタウロスを追っている途中、小説OSのアップグレードをめぐる陰謀を察したサーズデイは、エイオーニスの追撃をかわしながら黒幕の正体を探っていく。物語のスケールが増しただけではなく、分量的にもグレードアップし、初の上下巻になったのもファンには大きな朗報といえそうだ。

文学作品の世界をテーマパークのように実体化させ、その世界ならではの冒険を展開させるユニークな好シリーズ。予備知識がなくてもファンタジーとして楽しめるし、古典文学の素養があればより深く味わえるはず。どの作品から着手しても問題はないが、物語の流れを把握するためにも、やはり1巻から読み進めるのがベストだろう(文庫化された作品のほうが安いのもポイント)。2004年に発表された第4作"Something Rotten"の邦訳が今から楽しみな限りなのだ。

【関連サイト】
ヴィレッジブックス…刊行元であるヴィレッジブックスの公式サイト。新刊情報などがあります。
【編集部おすすめの購入サイト】
Amazonでミステリー関連の書籍をチェック!楽天市場でミステリー関連の書籍をチェック!
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます