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逆玉探偵が遭遇するこの世の毒(2ページ目)

宮部みゆき3年ぶりの現代ミステリー『名もなき毒』の主人公は『誰か』で初登場した杉村三郎。話題作の内容とシリーズの魅力にせまります!

執筆者:石井 千湖

シリーズの読みどころはココだ!

誰か
『誰か』に登場する“社長さん”も魅力的!
2作目の『名もなき毒』でさらに多くの読者をつかんだ感のある杉村三郎シリーズ。今後の展開が気になるところです。特に以下の3つ。

○杉村の家族関係の行方は?
杉村の妻・菜穂子は財界の大物・今多義親の愛娘。杉村は彼女の立場を知らずに恋に落ちました(詳しい経緯は『誰か』をどうぞ)。自分は普通の会社員なのに、妻は一生困らないだけの資産を持っている。家を買うとき、子どもの進学を考えるとき、杉村はどうしても妻との価値観のちがいを意識せずにはいられません。杉村は妻子を何よりも大事にしていて、義父のことも尊敬していますが、その価値観のちがいは仲のよい家族の関係にうっすらと影を落としています。

○杉村はホンモノの探偵になるのか?
杉村は、結婚を許してもらう代わりに義父の会社に入ります。菜穂子は妾腹の子で病弱ゆえに会社の実権は握らない。腹違いの義兄ふたりが後継者になっています。それなのに、会社では“ムコ殿”扱い。居心地は決してよいとは言えません。著者によると、杉村はいずれホンモノの探偵になるのだそう。そんな前触れは『名もなき毒』にもあるのですが、職業探偵になるとすれば波乱は避けられないでしょう。

○次はどんな魅力的なサブキャラ(社長さん)が登場するのか?
『誰か』も『名もなき毒』も、事件の真相はやりきれない。暗い部分が多いのですが、魅力的なサブキャラが物語に救いを与えています。『誰か』では、轢き逃げで亡くなった男がかつて勤めていた玩具会社の社長さん。『名もなき毒』では、毒殺事件が起こったコンビニのオーナーでもある運送会社の社長さん。ふたりとも面倒見がよく人情味のあふれるおじいさんです。悪意のある人間をリアルに描きながら、世の中そういう人ばかりじゃないと思わせてくれます。

探偵物語の面白さと魅力的なキャラクター、そして共感できるまっとうな倫理観を兼ね備えたシリーズの続刊に期待!

<関連リンク>
Yahoo!ブックス宮部みゆきインタビュー…ガイドが宮部さんにインタビューしました。『名もなき毒』が生まれた背景について詳しくうかがっていますので、ご覧ください。※9月27日午後、掲載予定

大極宮…宮部さんが所属する大沢オフィスの公式サイト。「立ち読み」コーナーで『名もなき毒』の冒頭が読めます。

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