第2位江戸川乱歩「芋虫」『江戸川乱歩傑作選』ほか所収
今読んでもまったく古くない。古典の超名作。 |
ある軍人が戦地から帰ってきます。世間は英雄として迎えますが、その代償はあまりにも大きいものでした。彼は手足を失い、鼻も口も原型をとどめていなかったのです。あるのは視覚と触覚だけ。彼の美しい妻は、献身的に面倒をみます。ところが夫婦生活の本当の姿を誰も知りませんでした。
夫の体は〈黄色い肉のかたまり〉。まるで芋虫のようだと妻は思います。無力な夫をいじめては、愛撫することで情欲さえおぼえる。そのことに彼女は罪悪感も感じています。そんなある日、彼女は夫に酷いことをしてしまい……。
衝撃的なラストシーンは忘れられません。グロテスクだけれども、美しくて悲しい。今読んでも、ぜんぜん古くない傑作です。
第1位ジャック・ケッチャム『隣の家の少女』
世にも残酷なボーイ・ミーツ・ガール小説。 |
メグは可愛くて活発な優等生。チャンドラー家の隣に住むデイヴィッドは、小川のほとりで偶然メグに出会って淡い恋心を抱く。ここまではよくあるボーイ・ミーツ・ガール小説です。ところがだんだん読むのが苦しくなります。なぜなら、メグはシェルターに閉じ込められ、裸にされ、熱湯を浴びせられ、酷い言葉を体に刻みこまれることになるから。新しい保護者ルースと子どもたちによって。
デイヴィッドは手は出しませんが、メグの裸が見たいのと、状況がどこまでエスカレートするのか知りたい一心で地下室に通います。ルースたちの味方のふりをしつつメグを助ければ〈自分だけにはさわらせてくれる〉と画策までする。しかしデイヴィッドはギリギリのところで良心をめざめさせ、メグを救おうとするのですが……。
ルースは下品だけど色っぽくて、きれいなお母さん。子どもたちにも優しく、話の分かる大人です。そのルースがなぜ、メグだけに悪意をむきだしにするのか。わからないから怖い。イヤだけど読むのがやめられない。そんな1冊です。
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