ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

新刊は警察小説が豊作!(2ページ目)

2月から3月にかけて、なぜか読みごたえのある警察小説が続々と出版されました。ビターだけど格好いい、大人のためのミステリーをどうぞ。

執筆者:石井 千湖


生き生きとしたヒロインに定評あり誉田哲也『ストロベリーナイト』

ストロベリーナイト
可愛いタイトルに反して、冒頭からグロい!でも読み出したら止まりません。
第4回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞したデビュー作『アクセス』のときから、魅力的なヒロインを生み出すことで定評がある誉田哲也。最新刊の『ストロベリーナイト』は、ノンキャリアでありながら27歳の若さで警部補に昇進した女刑事・姫川玲子が主人公です。殺人を扱う警視庁捜査一課の主任。しかも美人。

青いビニールシートにくるまれ、人通りのある植え込みに遺棄された死体。玲子は死体の胴体が切り裂かれた理由を“勘”で見破り、事件の法則を発見します。地道な捜査ではわからない盲点に気づくのが彼女の才能なのです。見合いしろとうるさい親や彼女に恋していながら煮え切らない部下、公安上がりの意地悪刑事に苛立ちつつ捜査を進めるにつれて、事件の背景に怪しいサイトの存在が浮かび上がります。

登場人物の意外性の描き方がちょっと類型的なので、ミステリーを読みなれている人ならば早い段階で犯人に気がついてしまうかもしれません。でも展開がスピーディでぐいぐい読めるし、死体を切り裂いた理由もなるほどという感じ。また、玲子が刑事を志すきっかけになったエピソードにもぐっときます。もしもシリーズ化するならば、今後の展開に期待!

いぶし銀の魅力で読ませる佐々木譲『制服捜査』

制服捜査
どんな仕事でも日の当たらない場所がある。ビターな味わいがまさに大人向け!
本書の主人公は、北海道にある田舎町の駐在警官・川久保。もともとは強行犯の捜査係でしたが、道警の不祥事による玉突き人事のあおりをくらって、小さな町の駐在警官になりました。犯罪発生率が管内最低の平和な町。ところが赴任してみると、不穏な空気が感じられて……。

何か大きな事件が起こっても、捜査の第一線に立てない制服警官。家族とも離れ、見知らぬ土地で孤軍奮闘する川久保の活躍を描いた連作短篇集です。

消えた少年の行方を探すうちに一見平穏な町に隠された闇を垣間見る「逸脱」、犬が散弾銃で撃たれるという出来事が殺人事件に発展する「遺恨」、よそ者の男と親に虐待された少年のあたたかなつながりが利己的な人間に踏みにじられる「割れガラス」、連続放火事件が閉鎖的な住民の間に疑心暗鬼を生む「感知器」、13年前の少女失踪事件が甦る「仮装祭」の5編。目の前にある腐敗から眼をそらさず、できるかぎりのことをする川久保が格好いい。

次ページでは刑事と自衛官がテロリストを追う作品と、もうすぐ発売の期待の警察小説が登場!>>

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