■16bit、44.1kHzは人間にとって必要十分なスペックなはず
「デジタルレコーディングの基礎知識」その1の記事で、サンプリングビット数やサンプリングレートを上げると音質がよくなるという原理は理解いただけたと思います。つまりサンプリングビット数を上げるほど音がよくなり、サンプリングレートを上げるよくなるというものです。
それをパソコンのサウンド機能を用いることで、実感することができます。たとえば、CDのサウンドをWAVファイルとしてハードディスク上に取り込んだとします。ご存知のように、このCDの規格ではサンプリングビット数が16、サンプリングレートが44.1kHzとなっています。
これを波形編集ソフトを用いて、8ビットに変更して再生させてみましょう。すると、明らかに音質が落ちたことを実感できると思います。スピーカーがあまりにもチャチなものを用いているとよくわからないかもしれませんが、ヘッドフォンで聞いてみれば、だれれも分かると思います。
同様にサンプリングレートを44.1kHzから半分の22.05kHzさらには、その半分の11.025kHzに落として音を聞いてみてください。ここでも音がこもった感じの悪いものになることが分かるはずです。確かに、16bit、22.05kHzの音だけを聞くと、結構いい音のように感じるかもしれませんが、よく聞き比べてみれば違いが見えてくるでしょう。
では、なぜCDが16bit、44.1kHzという規格となっているのでしょうか?
これは、人間の耳で聞く上でこれだけのスペックがあればいい、という判断からです。16bitというは、その1でも紹介したとおり、0~65535段階で音量を表現することができるもので、8ビットの0~255段階とは明らかに異なる表現力が異なるわけです。もちろん、それ以上あるに越したことはないけれど、これで必要十分としたのでしょう。
またサンプリングレートのほうは、もっと明確な根拠があります。44.1kHzというサンプリングレートの場合、最高でその半分の22.05kHzまでの音を再現可能な、スペックなのです。一方で人間の耳は健康な人で20Hz~20kHzまでの音が聞こえると言われています。つまり、22.05kHzまで音が出せるということは、人間の限界をカーバーしうる性能ということができるからなのです。
実際、われわれが普段聞くCDの音は非常にクリアで迫力のあるサウンドであると多くの人が思い、この音に不満を感じる人は少ないでしょう。中にはアナログレコードの音のほうがいいという人もいますが、やはりそれは少数派です。