お金の教科書~はじめて編~/ライフプランを考える

老後にかかわるお金

人生85年時代、実りある老後を過ごすための土台はお金です。数千万円単位の老後資金をどのように準備し、どのように運用・管理すればいいのか、知るのと知らないのとでは安心感に天と地ほどの差が出ます。

大沼 恵美子

執筆者:大沼 恵美子

貯蓄ガイド

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1-5 早くから計画的に準備し、運用は慎重に

老後のお金は、現役時代、退職時、リタイアー後に分けて考えます。老後に受け取る公的年金や企業年金、退職金等の額を合計し、老後の生活費や医療費など支出の概算を把握すれば、現役時代に貯めるべき老後必要資金がわかります。それを目標に堅実に貯めましょう。退職時は、公的医療保険や基本手当に関する情報を収集し、お得な制度を利用します。リタイアー後は、「収益性より安全性」を原則に、多額の老後資金を運用・管理します。

今回のレッスンで知っておきたいポイント

Point1安心の老後は早期の老後資金貯蓄計画から

平成20年の完全生命表(厚生労働省発表)によると、60歳の平均余命は男性22.09歳、女性27.66歳。老後は長くなり、それに伴って老後必要資金も多額になっています。老後必要資金は、「退職後の収入-(老後の生活費+予備費)」で算出します。60歳で退職する夫婦を例に考えて見ましょう。年金生活者(夫婦)の1ヶ月の平均生活費は、税金・社会保険料込みで約28万円です(平成19年総務省統計局「家計調査年報」)。60歳夫婦が平均余命まで生きた場合に必要とする生活費(夫婦期間22年、妻1人の期間6年間)は、28万円×12ヵ月×22年+28万円×70%×12ヵ月×6年=8803万円。これに、予備費(レジャー費用、子どもへの援助、医療費等)2000万円をプラスすると、老後の支出合計は約1.1億円になります。

老後の収入の中心は公的年金、退職金、企業年金です。一般的な60歳のサラリーマン夫婦が平均余命までに受け取る公的年金の総額は7000万円程度ですので、4000万円(=1.1億円-7000万円)程度不足します。退職金や企業年金が3000万円程度とすると、60歳までに準備すべき老後必要資金は1000万円になります。公的年金は、支給開始年齢が引き下げられ、受給総額も少なくなっていくので、準備すべき老後必要資金は増えます。公的年金や企業年金の受給額や退職金額を把握し、早期に老後資金貯蓄計画をたて実行することをお勧めします。

Point2老後資金は4つに区分して管理しよう

老後の資金は、基本的生活費の不足を補う「生活資金」、病気など緊急時に使う「予備資金」、住宅のリフォームや子どもの援助などに使う「使用予定資金」、老後を楽しむ「余裕資金」など目的別に区分し管理します。絶対に減らしてはいけない「生活資金」は元本保証の金融商品で、「予備資金」は安全性と換金性を兼ね備えた金融商品で運用します。「使用予定資金」はリスク度と運用期間に注意して低リスクの金融商品で運用することも可能です。リスクを負うことが可能な「余裕資金」は、一部を収益性のある金融商品で運用してもいいでしょう。とはいえ、老後資金の運用は失敗が許されないので、「収益性より安全性を重視する」というのが基本です。

Point3基本手当と年金は同時に受給できない

一定の要件を満たす雇用保険の被保険者が失業した場合、ハローワークで求職の手続きを行うと、雇用保険から基本手当(失業給付)が支給されますが、65歳までに受給する特別支給の老齢厚生年金と同時に受給することはできません。これを「併給調整」と言います。年金の支給停止期間は、基本手当の申請手続きを行った翌月から基本手当の受給期間満了の翌日の月までです。年金と基本手当どちらを受給するかは、受給総額を計算して選択しますが、基本手当が多い人がほとんどです。年金の裁定請求と求職の申し込みを同時に行えば、基本手当の支給が終わると年金の支給が開始されます。

Point4退職後はどの公的医療制度に加入する?

健康保険に加入していた人が退職後に加入する公的医療保険は、
1.特別退職被保険者
2.家族の被扶養者
3.民健康保険
4.健康保険の任意継続
の中から選択します。いずれに加入しても医療費の自己負担割合は3割です。
会社が特定健康保険組合であれば「特別退職被保険者」になります。年収130万円(60歳以上は180万円)以下で健康保険の被保険者の年収の1/2以下であれば「家族の被扶養者」になれます。国民健康保険の保険料は、前年度の収入で決まるので退職直後の1年間は保険料が高くなるため、一般的には保険料全額負担であっても保険料が比較的安い「健康保険の任意加入」を選びその後「国民健康保険」に加入します。75歳以上は、後期高齢者医療制度に加入します。

Point5老後資金の準備に適する金融商品

老後資金を現役時代から準備するのに適する金融商品に、財形年金貯蓄と個人年金保険があります。財形年金貯蓄は、財形貯蓄制度のある企業に勤める55歳未満の人が、給与天引きで5年以上積み立てて60歳以降に年金で受け取るものです。積立限度額は、貯蓄型は財形住宅貯蓄とあわせて元利合計550万円、保険型は払込保険料385万円(財形住宅貯蓄とあわせて550万円)までで、非課税です。個人年金保険は、契約時に定めた年齢から年金を受け取る民間の保険です。生存中ずっと受け取る終身年金、生存に関係なく一定期間受け取る確定年金、生存している場合のみ一定期間受け取る有期年金、夫婦いずれかが生存している限り受け取る夫婦年金等があります。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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