親は、子どもに尊敬されるべき?
ガイド:スポーツ界に限らず、いわゆる「成功者」の多くが、自分の親に対して敬意を持っているのが印象的です。やはり、子どもに尊敬され続ける親でなくてはいけないのでしょうか?生田先生: 親が子どもに尊敬されることは、確かにある程度は必要でしょう。尊敬を介して「上下関係」ができ、世の中が自分の思い通りに動くわけではないこと、つまり社会に出るにあたって知っておくべきマナーやルールを知ることができます。また、子どもにモデルとしての「大人像」を見せることは、子どもの成長にとってプラスの情報となります。
ガイド:でも、フツーに暮らしていたらそうそう尊敬される姿ばかりではないと思うのですが?毎日一緒に暮らしているわけですし、「上下関係」というのも、お互い肩が凝りそうです。
生田先生: その通りです(笑)。「親への尊敬」は通常大人になって「あぁ、親はがんばってくれたなぁ、ありがたいなぁ」などと思い出したときに感じるもの。子ども時代から一心に「うちの親は素晴らしい」と思っているのは、むしろ珍しい(笑)。
心理学の世界的カリスマが言う!「ほどほどの親がいい」
生田先生: 心理療法における有名なカウンセラーが、こんなことを言っています。精神分析学の対象関係論研究者・カウンセラーでもあるフェアバーンの言葉ですが「どのような親が理想的なのか?」という問いに答えて、「ほどほどの親がいい」と言ったのです。ガイド:「ほどほど」(笑)。すごく納得できる言葉ですね。うーん、短いけれども非常に含蓄に富む表現だ(笑)。
生田先生: そうですね。完璧な親なんていない。親だってもちろん人間ですから、尊敬できるところもできないところもあるのが当たり前です。
でも子どもは、基本的には親を尊敬しているものなんです。親に誉められたい、愛されたいという欲求を持っています。どんなに反抗的な子どもでも、親の評価を気にしているものです。
ガイド:なるほど。でも、子どもの中には、これでもかというほど親を馬鹿にしている子どもも、いますよね?
生田先生: それは、家族のバランスがおかしくなっているのです。例えば母親が、子どもの前で父親をバカにしたり、父親が母親をバカにしたりすると、子どもは「お父さんは(お母さんは)バカにしていいんだ」と覚えてしまいます。また、親が子どもの言うなりになって「王様」にしてしまうことで、わがままにし、親や他人を尊敬することができなくなるケースもあります。
ガイド:親子関係に、もともと「親―子」の上下関係は備わっているのですね。
生田先生:親がそれを崩してしまうような、おかしなことをしないことを心がけるといいのではないでしょうか。いい親でありたい、子どもにいいしつけをしたいという気持ちはもっともですが、完璧な親なんているわけはありません。完璧じゃなくても生きている、ということも学びの一つと思って、無理をせずに子どもと一緒に歩いて行くのでいいのではないでしょうか。
――メディアを賑わす華やかな「親子鷹」の成功例は、実は非常にリスクの高い親子関係を上手に通過した結果であるということ。むしろ、私たちは親子関係にもともと備わっている、上手なバランスを信じて、「ほどほど」でいていいのですよと教えられました。「理想的な親とは、『ほどほど』である」、この言葉を胸に刻んでおきたいものです。
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【監修】 武蔵野大学 通信教育部 人間関係学部講師
生田倫子
東北大学大学院教育学研究科博士課程修了。教育学博士、臨床心理士、家族相談士。家族心理学、心理面接過程におけるコミュニケーションを研究。
臨床活動として、病院臨床・児童養護施設カウンセラー・スクールカウンセラー・被害者支援などを行ってきた。
連絡先:MCR(NPO法人・不登校引きこもり研究所)
『家族心理.com』