ときに虐待になることも…親が子供に言ってはいけない言葉とは?

親が子供に言ってはいけない言葉 親の一言が言葉の虐待になることも

親の一言が言葉の虐待になることも

「昔、こんなことを言われた」と、子供は親の何気ない一言をしっかりと覚えていたりするもの。私たちの言葉は、想像する以上に重みを持ち、ときに言葉の虐待になる事さえあるのです。子育て中の親にとって、子供に言ってはいけない一言とは?心理学者の生田倫子先生にお聞きしました(記事の取材内容は初回公開日2006/03/10時点のものです)。

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子どもは親の言葉をこう聞いている

私たちの経験でも、親の何気ない一言が糧や励みになっている場合もあれば、棘となって刺さっていることもありませんか。子育てをしながら自分の「育ち」を振り返るとき、親の言葉の持つ影響力の大きさに気づかされます。

生田先生がカウンセリングをしてきた中には、「言葉」がきっかけとなって回復したり、逆に悩んだりという例もたくさんあるそうです。

例えばデザイナーを目指しながら現在カラーコーディネーターとしてもがんばっている、こよみさんは、5歳くらいのとき母親に何気なく言われた、「勉強は出来ないけど、お洋服を組み合わせるセンスがいいわね」という言葉がずっと心に残っていたそうです。

また、現在ニートになってしまっているゆずる君は、小学校のときやはり母親に言われた「ホントにお前は何をやってもだめなんだから」と言われたことがずっと記憶に残ってしまっているといいます。そのとき母親は、ゆずる君がスポーツが苦手なことを指して言ったようなのですが、ゆずる君は自分の全部の事柄がだめに思えてしまい、何事にも自信がないと訴えていました。

このように、子供は親本人が意図しないメッセージを「聞いてしまう」こともあるのです。親と子もまた、人間関係。親が子供に言ってはいけない一言を考えます。

 

親が子供に言ってはいけない言葉1:子ども自身の存在を否定する言葉

その子の存在を全否定する言葉はNGワード

その子の存在を全否定する言葉は絶対タブー

「あなたがいなければ」という、その子の存在を全否定する言葉は絶対タブーです。同様に、親は何気なく言っているつもりなのかもしれませんが、「あなたが男の子/女の子なら・・・」などの性別の否定も非常に深く傷が残ってしまうといいます。努力ではどうしようもないことを言われ、子供はやはり自分を否定されたと感じます。

子供の存在を否定するような言葉は、なぜいけないのでしょうか。そして、それを聞いた子供はどのように感じ、どのような影響を受けるのでしょう?

子どもは親から非常に大きな影響を受けます。存在を否定するような言葉を、「心理的虐待」と呼びます。叩いたり蹴ったりはしていないものの、「暴力」の一種です。

子どもは、「親が思っている自分像」をそのまま「自分像」として受け止めます。つまり周りから見てどんなに勉強が出来ても、親が「勉強が出来ない子」と思っていれば「自分は出来ない子」と思っています。同じように親が「悪い子」と思っていれば「悪い子」と自分も思ってしまい、自分に自信が無く、出来るという感覚ももてない子になってしまいます。

 

親が子供に言ってはいけない言葉2:子ども同士を比較するような言葉

親がうっかり言ってしまいがちなのが、「お姉ちゃん/お兄ちゃんに比べてあなたは…」、「○○ちゃんはできるのに…」などと、子供同士で比較して評価する言葉。自分が言われたと考えると、確かにこれがいけないのは分かりますが、比較された子供は、どういう心境になり、どのような行動に出るのでしょうか?

子どもはこのような言葉を受けると、「お母さん(お父さん)は、お兄ちゃんだけが好きなんだ。私のことは好きじゃないんだ。」という確信を持ってしまうときがあります。このように思ってしまった子どもは悲劇です。下手をすると、一生この気持ちを引きずるときもあるのです。

小さいうちほど、「親からの評価=自分の評価」になってしまいがちなのが子どもです。つまり、「自分は親に好かれていない=自分は生きる資格がない」と飛躍してしまい、自分を大切に出来なくなったり(自尊心の低下)、自分はやれば出来るんだ!という気持ちが無くなったり(自己効力感の低下)してしまうのです。

また、その比較された対象、例えば兄弟に意識的・無意識的にも関わらず「敵意」を持つようになります。それが妹や弟であれば陰でいじめたりすることもありますし、姉や兄などの自分より強い相手であれば、困らせるようなことをしたり、行動には移さなくても不幸を願ったりすることがあります。

子供同士を比べてしまうとき、それを言う親の側には、勉強の出来であるとか、学校での評価であるとか、友人関係や行儀など、何か子供を評価しているような感じがします。「評価」をあせる親が、真面目さのあまりつい厳しいことを言ってしまって、取り返しがつかなくなる、子どもに対する言葉の暴力を止められない、そういうお母さんは実は少なくありません。

自分では子どもにひどいことを言うのを止めようやめようと思っていても止められないとき、そんなときはドツボにはまってしまっているかもしれません。このようなお母さんは、意外にも「理想の子育て」を追いすぎている場合があります。例えば、
  • 子どもに絶対怒らない
  • いつも笑顔
  • いつも一緒に遊んであげる
  • いつも手作りのお菓子を作ってあげる
  • いつも褒めてあげている

等々。子どもに虐待をしてしまうお母さんは、意外にも「そんないいお母さんいないよね?」と客観的に見れば言いたくなるような「良いママ像」に苦しんでいる場合があります。そして、ひどいことを言ってしまい子どもの寝顔をみながら自己嫌悪に落ちたりするのです。ドラマのようないいお母さん、いい子どもなんていない!ということがわかると落ち着いたりする場合も多いものです。

それから周囲の助けを得ること。夫が忙しいならば、実家、近所のママ友達、児童館、民生委員、保育園など、自分だけで子どもを抱えず周りに甘えましょう。これを「ソーシャルサポート」といいます。「社会援助」ですね。

 

親が子供に言ってはいけない言葉3:本人の前で兄弟や他の子供を褒める

前にあげた2点は、子育てでもよく言われ、お母さんたちも注意を心がけていることだと思います。しかし見逃されがちなのが、子供をけなすのでなく、「褒めない」ということの影響なのです。たとえば、妹の前で姉を褒めると、妹には直接にはネガティブなことも何も言っていないので、親はこれをOKと思ってしまいがちです。

しかし実際には、妹は自分がけなされたと同様の心証を受けるのです。親が意図しない言外のメッセージを受け取ってしまう、これが盲点です。

もう少し具体的に考えてみましょう。姉と妹と二人で親戚の家に行って、「あら~、お姉ちゃんすっかりきれいになって~」と言われたとします。親戚は「褒めたつもり」なので、まったく悪気はないのです。しかし、妹にしてみたら、「きれいになったと言われない=自分はきれいじゃない」というメッセージを受け取ります。だから、先ほどのように「お姉ちゃんに比べてあなたは…」と言われたのと同じ心理状態になるのです。

最近「褒めて伸ばす」という教育法が注目されている一方で、このように傷ついている子どもが多くなっています。

人間は、差に敏感な生き物なのです。きょうだいならばなおさら、何事も平等にしてあげなければいけません。片方だけを褒めるときは、一人だけのときにしたり、「ちょっとこっちにおいで」と手招きして耳打ちするなどの配慮をしましょう。

 

親は何を意識して子どもに話しかけるべき?

子供は大人のメッセージを敏感に察知するということがお分かりいただけたかと思います。では、大人が意識すべき点は、どのようなものでしょうか?
  • こどもは、「親が思っている自分像」をそのまま「自分像」として受け止めます
  • いくら頭にきても子どもの存在を否定するようなことを言わない
  • 兄弟や友達と比べるのは、仲を悪くする元凶。親は自分のことが嫌いなんだと思ってしまうため、自分に自信を失ってしまいます
  • ひどいことを言いそうなときには、「完璧なママ」を目指していないか考えてみて
  • そんなとき、必ずまわりにサポートを求めること。「子どもへの攻撃とママの孤独は裏表」
  • ほめているつもりで、「褒められない子」を作らない
  • ほめるときは、その子一人だけ、または耳打ちにするように配慮する
「親の責任」と肩に力を入れて考えてしまっては、子育ては大変なものになってしまいます。考えすぎず、「子供は敏感なのだ」とかつての自分の子供時代を思い出しながら、「自分が言われたらいやな事は言わない」「自分が言われたらうれしいことで、声をかけてあげる」を原則にする程度でも、十分な心がけかもしれません。

親と子も人間関係。お互いに気持ちよく信頼関係を結べるような会話をしたいものですね。


【関連記事】 【監修】 武蔵野大学 通信教育部 人間関係学部講師
生田倫子
東北大学大学院教育学研究科博士課程修了。教育学博士、臨床心理士、家族相談士。家族心理学、心理面接過程におけるコミュニケーションを研究。
臨床活動として、病院臨床・児童養護施設カウンセラー・スクールカウンセラー・被害者支援などを行ってきた。
連絡先:MCR(NPO法人・不登校引きこもり研究所)
『家族心理.com』


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