ガイド土橋:
では、ここでガラッと話を変えまして、文具を魅力的に撮影するコツについてお聞きしてもいいでしょうか。
北郷さん:
もちろんいいですよ。
「では、今回の私の愛用文具は私が撮影しましょう。」とササッと機材をセッティングされ、撮影していただきました。 |
私は文具撮影については、すべて自己流で試行錯誤を繰り返して今の私のスタイルを築き上げてきました。
北郷さんが今愛用されているニコンのD300。ボディ全体には撮影用のテープである「パーマセルテープ」で貼り巡らされている。 レンズの上に見えるレザーは、趣味の文具箱のスタジオで、カメラを構える時にこの部分を台にセットすると、ベストポジションになるのだとか。 |
ガイド土橋:
まず一番押さえておくことは何ですか?
北郷さん:
光です。
家の中で撮影する場合、光源が幾つもあると思います。例えば、窓から入ってくる太陽の自然光、そして部屋の照明等です。まず撮影する場合に光源を一つに絞るべきです。
昼間であれば部屋の照明を落として自然光だけにするといいでしょうね。
このとき効果的なのは、窓にトレーシングペーパーを貼ることです。これをすると、光が拡散されるので、ペンの1ヶ所だけに光源が当たるのを防いで、ボディ全体にバランスよく光が映り込んでくれます。
そして、これはちょっと専門的になりますが、カメラのホワイトバランスをオートではなく、任意に設定すると良いでしょう。
ここまでが準備段階で、いよいよ撮影に入る訳ですが、いきなり撮らずに、まずはその文具をじっくりと眺め、その文具の魅力を自分なりに咀嚼していきましょう。
ガイド土橋:
なるほど、そういうステップを踏んでいるからこそら、北郷さんの写真はいつも物欲がそそられるんでしょうね。
ところで、そうした撮影の際に使う小道具みたいなものはありますか?
北郷さん:
これがその小道具セットのボックスです。この中にいつも使うものが一通り入っています。例えばこの「トレシー」ではペンについた汚れや指紋等をふき取ります。
北郷さんが文具撮影の時には必ず使っているという撮影小道具セット |
撮影では、商品をメーカーなどからお借りしているものが多いので、傷は大敵です。「トレシー」は傷を付けずに綺麗にすることができるので、とても便利です。
撮影するときには、指紋などは大敵。手袋をして「トレシー」できれいにする。 |
そしてペンの固定には、「ねり消し」を使います。プロカメラマンが使うカメラ用品にも商品を固定するための粘着糊があるのですが、それは油っぽいので、蒔絵などの高価な万年筆等には禁物です。
ペンの固定には欠かせない「ねり消し」 |
その点、「ねり消し」には油が含まれていないので、安心して使えます。しかし、中には毛羽だったレザーの文具ということもあります。そんな時は「ねり消し」が使えませんので、両面テープを使うこともあります。
ガイド土橋:
これはフリスクケースのようですが、何に使うんですか。
撮影時に文具の台として、すごく便利なフリスクケース。 ちなみに、北郷さんはフリスクは食べないそうで、これらは全て友人知人から頂いたものだという。 |
北郷さん:
文具の下に置いて台として使います。フリスクケースは面がとても広くて使いやすいんです。
例えば、ノートを開いたところを撮影するとします。机に広げたままでは紙面がどうしても丸くなってしまいます。そんな時にこのフリスクケースを下に敷いて起こしてあげるんです。こうすると紙面がフラットになってくれます。
このようにノートの下に置くと、紙面がフラットになった写真が撮れる。 |
この消しゴムたちは、文具を置く背景紙の汚れ取り用。 |