次に、話をちょっと変えまして、書類の整理についてお聞かせください。
フリーアドレススタイルのデザインフィル本社 |
当社では、フリーアドレスという各自が専用の机を持たないワークスタイルをとっています。ですので、自分専用のスペースは引き出し一つと、そこに入るファイルボックスがひとつしかありません。個人の書類は全てそこに入れなくてはならないんです。
ガイド:
個人のファイイングスペースが一つとは、少ないですね。それで足りるものでしょうか?
飯島さん:
もちろん、足りませんね。ただ、こうしてあらかじめ入れられる量が決まっていることで、本当に必要なものだけを保存するようになります。
何か新しいものが増えたら、何かを減らすということをせざるを得ません。
そうした個人のボックスとは別にチームの共有ボックスというものもあります。いずれにしてもとても限られたスペースしかないことに変わりありません。
このボックスはトラベラーズノートの共用のもの。 |
中には飯島さんが海外で集めてきた。コースターやチラシなどの様々な紙のサンプルがぎっしりと入っている。 |
ガイド:
最後に、飯島さんにとって文具とはどんな存在ですか?
トラベラーズノートのコアユーザーを自認しておられる飯島さん。 |
究極に言ってしまうと、「道具」だと思います。
私も含めて男性はそうした道具に深い思い入れを込めるものです。当然自分が普段使う文具などは、自分の好みに合うものを選びます。つまり、その自分が持っている道具によって自らの考えや趣向性などを主張するわけです。
特に当社では先程もご紹介した通り、自分の机がありません。机があれば、好きな写真を飾ったり、そうしたことができますが、私たちはそもそもそれができませんのでその分、持っているもので自分の世界を作っていくということにもなっていると思います。
また、今年私は、ちょうど40歳になったのですが、最近つくづく感じるのは、時間が経ったものが生み出す味わいの心地よさです。
その味は、地道に日を重ねていくことでしか作ることができません。そうしたことを大切にしたいと、思うようになりました。
と言いますのも、40歳の私が普段使っているものがすべて新品ばかりだというとなんだか薄っぺらい感じがします。
20歳であれば、まだ、試行錯誤の段階ですので、新品ばかりを使っていても全く問題はないでしょう。しかし、ある程度の年齢に達したら、年を経てきただけの何かを持っていたいものです。
あともうひとつ大事なことは、文具は表現のための道具であるということです。多くの表現は、白い紙に何かを記すことから始まります。使い込んだ味のある道具は、表現を心地よく喚起し、サポートしてくれます。そんな道具に囲まれて暮らすことで、生活がより豊かになるような気がします。
私自身、トラベラーズノートをはじめ、ものづくりをするときにもそうした点をとても重要視するようになりました。
ガイド:
本日はありがとうございました。
一冊のノートから奥行きのある世界を作り上げているトラベラーズノート。 |
取材後記
当初、飯島さんにこの隣の文具活用術の取材を申し込んだ際、「いや~、私はそれほどこだわりはないので」と、おっしゃっていました。しかし伺ってみると、飯島さんならではのこだわりが次々に飛び出してきました。
ご本人もおっしゃっていましたが、トラベラーズノートのコアターゲットは自分自身であるというように、実際飯島さんは、トラベラーズノートすべての商品、たとえばダイアリーやノートその他アクセサリに至るまで、必ず1回自分の実生活の中で、使い込みその時これはちょっと違う、ということがあれば迷わず商品化を中止してしまう、そうです。
それが、トラベラーズノートのあの独特な世界感を作っているんだとつくづく感じました。
<関連リンク>
トラベラーズノートの公式サイト
飯島さんの作品(絵)も掲載されているトラベラーズノートのブログ
<「隣の文具活用術」バックナンバー>
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