革本来の艶を活かす素仕上げ!
靴では底材に用いられる素仕上げは、「革の色」を一番素直に活かした色の付け方。持ち主の取り扱い方により経年変化の差が歴然と出てしまう革でもあります。因みにこれは、この仕上げを用いたドイツのBREEの鞄で、1999年に購入したもの。買った時は真っ白だったんですが…… |
「色を付ける」的な分類の中で、最初に取り上げなくてはいけないのは、逆にそれが最小限にしか施されない「素仕上げ」でしょう。少なくとも表面塗装は行わず、ロール掛けやバフ掛けのみによって革自体の色艶を全面的に活かす仕上げをこう呼びます。原始的な鞣し方法である、植物タンニン鞣しの革でしかできない着色方法と考えていただいて結構で、著名なところでは、ヴィトンのモノグラムシリーズの縁取りに使われている、あの肌色の革がこの仕上げです。
染色も全く行なわないで完成させる場合もあり、この状態の革のみを本当は「ヌメ革」と言います。本当は、と書きましたが、この「ヌメ革」なる呼称は、実際にはもっと広義に用いられていて、極端な場合は単に「植物タンニン鞣しの革」全般を指す場合もあるので注意が必要です。本当の意味でのヌメ革も含めてこの素仕上げの革は、色のみならず革そのものの風合いや鞣しの長所が最大限に残るためか、使い込むとタンニンの化学変化が影響して次第に飴色掛かって行くのが特徴です。
ただし塗装を施していない分、汚れが付きやすくしかもそれが目立つのが大きな難点です。よってお手入れに細心の注意を図れるか、全く逆に汚れても気にせず・気にならず、むしろ味わいと割り切れてしまうようなものに主に使われます。上記のヴィトン場合は、本体がメンテナンスフリー性を考えPVC加工された綿生地でもあるので、元々は後者の意図だった筈で、故に無闇に猫可愛がりしないのが王道だと思うのですが…… それは兎も角、靴ではこの仕上げが施された革は専らインソールやアウトソール等の底材用で、後者は靴を作る最終段階で着色されるのが一般的です。
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