ラテン靴との融合が進むイギリス靴
2006年にデビューしたガジアーノ&ガーリングの内羽根式キャップトウ・オックスフォードです。木型は典型的なイングリッシュアーモンドトウでありながら、何故か我が国ではあまり見かけない「GG06」。極めて伝統的なイギリス靴である一方、ラテン的な要素もデザインに高次元に散りばめられた、良い意味でこの10年を代表するイギリス靴です。因みにウィズはDですが、実際の足入れ感はもっと細い! |
最初はやはり、19世紀以降これまでの紳士靴の規範を創り上げてきたと申してもよいイギリスの靴から振り返ってみましょうか。1999年の今頃と言えば、例えば旧工場をエルメス(ジョンロブ・パリ)に売却し、新工場に移って数年目のエドワードグリーンの評価が、まだ微妙に揺れ動く状況だったのを鮮明に覚えています。また、チャーチがその秋にプラダグループ傘下に入ったことで、「今後はどんな靴を作るのだろう?」と旧来からのファンの内心が穏やかでなかった、そんな頃でもあります。
それでも今日巷で多く見られるイギリスの靴の比べると、雰囲気に武骨かつ質実剛健さがしっかり残っていたものが大半で、まあ、小生のような頭のカタイ人間でも、「いつかは買って一生履くぞ!」と浮気せずに思わせてくれる、男っぽいものばかりだった気がします。そのような潮目が明らかに変化したのだ、と感じたのは2002・3年頃。クロケット&ジョーンズが上級ゾーンである「ハンドグレード」に、それらとは全く対照的な流麗なロングノーズチゼルトウを持つ337木型を本格採用し始めた辺りからです。
この木型はもともとイギリス起源ではなく、同メーカーのパリ支店のオリジナルだったこともあり、それまで他国の紳士靴にも大きな影響を与えていたイギリスの紳士靴が、逆にそれらから影響を受けていることを象徴する存在として、小生には映りました。前のページで少し触れたとおり、スーツやジャケットにイタリア的な美意識が世界的に広まっていったことも作用し、以後メーカーやブランド名を問わず、造形面でイギリス靴の「ラテン化」は徐々にかつ確実に進み、今日に至っているような気がするのです。底付けこそ相変わらず、伝統的なグッドイヤー・ウェルテッド製法ではありますが。
そのような状況の中、結果的に一番「変わらなかった」イギリス靴は? 次のページで見てみましょう!