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靴に使う「牛革」を深く考えてみる その2

今回の「メンズシューズ基礎徹底講座」では、「皮を革にする」鞣し方法の代表例を解説します。伝統的な方法の延長形と、科学技術の進歩から恩恵を受けた方法、いずれも靴のどこに使うか? がキーポイントです。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

「皮」を「革」に変える、大切な工程!

様々な牛革
一足の靴に使われる牛革でも、そのパーツに求められる性能次第で最適な鞣し方は変わります。例えばアッパーとアウトソールでは、最適な方法は全く対照的!


ブランドネームや価格の高低のような短絡的な判断ではなくて、使用目的に応じた靴を選ぶ際の一つの目安となっていただけるよう前回から始まった、靴に用いる牛革の種類を知るシリーズ。例えば前回の内容ですと、カーフスキンばかりが「良い原皮」とは限らないことをご理解いただけると一番嬉しかったわけです。ステアハイドにはそれにしかできない素晴らしい使い道がありますし、その場では申し上げませんでしたが、靴向けとしてはあまり用いられないカウハイドの肩(ショルダー)の部分は、例えばブライドルレザーやベルティングレザーのような「男の仕事用」的な革鞄の原皮として無くてはならないものです。そう言えば靴と同様に最近の鞄でも、使い込んで一緒に歳を重ねたくなるような新品を、滅多に見つけられなくなったなぁ……

余談はさておき、今回は第2弾として、原皮を調達した後の作業である鞣しの方法の違いについて探ってみましょう。「鞣し」とは、皮から不要な体毛や脂肪を取り除くだけでなく、皮の主成分であるタンパク質(コラーゲン)を、各種の鞣し剤を用いて結合・固定・安定化させることを通じて、「皮」から腐敗・乾燥しにくい「革」に変化させる化学処理のこと。つまり「皮」に「革」としての確固たる役割を与える、地味だけれども極めて重要かつ決定的な工程です。

この「鞣し」なる技術は、人類が誕生してから恐らく最初に発明した化学処理とも言われ、樹木や藁を焼いて出てくる煙で燻したり、皮を剥いだ動物の脳漿をまぶしたり、人間が口で噛んで出てくる唾を用いたりするなど、太古から様々な地域で様々な工夫が見られました。それらのうちの一部は伝統工芸的に残っているものありますが、今日一般的に産業として行われている鞣しの方法は、植物系の液体若しくは鉱物系の液体のいずれか、若しくはその双方を鞣し剤として用いる方法が主流です。その代表例を以下のページで挙げてみましょう!


次のページでは、「伝統に比較的則った鞣し方法」について! 
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