旧来通りの「手作業による釣り込み」!

釣り込み1
新しいインソールを付けるべくオリジナルの木型に釣り込み直された、今から17・8年前のリーガル製ポロバイラルフローレンのリザードタッセルスリッポンです。ちょっと痛々しいですが、下縁部の小釘の多さにご注目あれ!


前回ではアウトソールだけでなくインソール(中底)も取ってしまったところまでお話した、オールソール交換のため純正リペアに出した、小生のリーガル製ポロバイラルフローレンのリザードタッセルスリッポン。今回はこの状況から、どのようなステップで「再び楽しく履ける靴」として蘇ってくるのかを追ってゆきたいと思います。ここから先の工程は修理と申すより、言わば靴を事実上ゼロから作り直すのと同じになるので、グッドイヤー・ウェルテッド製法の靴の底付け方法を知るのにも絶好の機会になるかと思います。

アッパー(甲革)などの「靴の上半分」に、再び新しいインソールを取り付けるには、木型に仮止めした後者の上から前者を被せ、その縁部を引っ張り、小釘で密着・固定することからまず始まります。この工程を専門用語で「釣り込み」と呼んで、新品であろうが修理品であろうが、靴の形状が決まってしまう極めて、極めて大切な作業です。アッパーやライニングはもともとオリジナルの木型に沿って裁断されているので、それらにシワが出ないようインソールに釣り込むには、前回書いたように「この靴を最初に作った際に用いたのと全く同じ木型が、どうしても必要」なのです。

グッドイヤー・ウェルテッド製法のものも含めて、新品の既製品の靴を作る際はメーカー・ブランドがどこであれ、現在この工程はほぼ機械化されています。が、今回のような修理品の場合、リーガルでは誂え靴と同じ旧来からの「手作業による釣り込み」を敢えて採用しています。程度の差こそあれ修理品の靴はアッパーが劣化しているので、個々の靴の状況を見ながらこれ以上のダメージを与えないように、それを引っ張り小釘で固定してゆくためには、一律的な機械造形(それはそれで、新品の品質の安定には大いに貢献する技術です)より、長年の経験に基づいた文字通りの「手加減」の方が、遥かに精度が高く仕上がるからです。

釣り込み2
釣り込み直した靴のつま先下部をアップしてみました。既製品の靴を新品で作る際、この工程は大抵の場合機械で行いますが、リーガルでは修理品はこれを手作業で行います。



釣り込み3
ちょっと見づらいかもしれませんが、アッパーの劣化がやや進んでいる場合や2回目以降のオールソール交換などの場合は、その縁の先にもう一枚別のアッパーを縫製した上で釣り込みを行う場合もあります。このような細かい工夫こそ、ユーザーの「もっと履きたい!」に応えようとするリーガルの姿勢そのものです。




次のページでは、さあ、ようやく「底」が縫われます!