もはや履いたことない人の方が、多いのかな?

 SCOTCHGRAINのタッセル
日本のビジネスマンの足元を支え続けるスコッチグレインが、かつて作っていたタッセルスリッポンです。3Eウィズ表記でしたが小生のような細身の足でも横ブレすることがなく、かといってつま先に不自然なアタリもない、隠れた名靴でした。2008年はこのスタイルに、久々に注目が集まります!


前々回前回で、スリッポンの中では一番のおなじみの存在であるローファーを徹底的に見てまいりました。一口にローファーと申しても、本当に様々なものがあることがお解りいただけたかと思います。

今回は、かつてはローファーと並ぶスリッポンの代表例だった、タッセルスリッポンを採り上げます。甲の中心にある房飾り=タッセルと、それを繋ぎトップラインをグルッと一回りする革紐がデザイン上の特徴であるこの靴は、1990年前後を境に次第にトレンドの表舞台には出てこなくなってしまったので、世代間での認知度にかなりのギャップがあるのが現状です。恐らく1970年以降の生まれの方だと、この靴を履いた経験自体を全く持たない男性がほとんどでしょう。

ただ一方で、2008年春夏はこのスタイルが約20年ぶりに「台風の目」的存在になるのも確実な情勢です。なのでまずは、基礎知識としてこの靴がどうやって誕生し、どうやって有名になっていったのかからお話しいたしましょうか!


第二次大戦後のアメリカで誕生

ブルックス ブラザーズのタッセル
タッセル普及秘話になくてはならないブランドである、ブルックス ブラザーズネームのコードヴァンタッセルスリッポンです。オールデン製があまりに有名ですが、こちらは何と日本の大塚製靴製。1980年代の一時期のみに販売された、ある意味貴重品です。


前述のとおりタッセルとは、紐の先端に付けられる「房飾り」のこと。それ自体は宮廷での室内履きや兵士用のブーツになど、ヨーロッパの靴でもそれ以前から見られたディテールでした。が、今日のタッセルスリッポンのスタイルを確立したのはアメリカで、しかもあのオールデン(Alden)が第二次大戦後の1948年に初めて創りあげたという、比較的新しいものなのです。

アメリカのとあるハリウッド俳優が、ウィンザー公が履いていたタッセル付きの紐靴にあこがれ、ニューヨークのとある靴職人に「これと同じのを1足作って!」と頼むところから話は始まります。出来上がった靴は見た目はともかく残念ながら彼の足に全く合わず、この俳優はニューヨークのA靴店とビバリーヒルズのB靴店にこの靴を片足ずつ預け、見た目を壊さずもっと快適な履き心地にこの紐靴を改良できる靴職人やメーカーを捜して欲しいと願い出ます。偶然とは恐ろしいもので、A靴店もB靴店も製作を依頼したのが全く同じ靴メーカー、すなわちオールデンだったわけです。結果このメーカーは、紐靴ではなくスリッポンとすることで彼の要求を見事に満たし、ここに「タッセルスリッポン」という靴が誕生します。

それからしばらくたった1957年に、この靴の「適応力の広さ」に目を付けたのが、かのアメリカントラッドの雄、泣く子も黙るブルックス ブラザーズです。かつて宮廷の靴にも用いられたタッセルの端正な雰囲気と、スリッポンが持つ気楽さが仲良く同居するこの靴に、このブランドは言わばONとOFFの両立性を見出し、オールデンにオリジナルモデル(かかと周りにステッチングが入るのが変更点)の製造を依頼し大好評を博したのです。以来この靴は、アメリカントラッドを代表する元祖ビジネス・カジュアル兼用靴として、結び目を蝶結びにしたりつま先をフルブローグ状にするなどのバリエーションを数々生み出しながら、ヨーロッパ諸国にもわが国にも普及していったわけです。


次のページでは、他の靴では決して味わえない、タッセルスリッポン独自の楽しみ方等々をご教授申し上げましょう!