伝統と現代性、双方を享受できる一足!
トレーディングポストに2008年春に登場したVフロントプレーントウ 、”Sidmouth”です。現代的な造形の核心にイギリス靴らしい伝統を厭味なく埋め込めてしまう、このメーカーらしさが堪能できる一足です。 |
イギリスを代表する靴メーカーであるクロケット&ジョーンズ(Crockett & Jones)からは、ご覧のようなVフロントプレーントウが届きました。この種の靴は鳩目を3穴としたデザインが比較的多いのですが、こちらは2穴とすることで、シンプルでかつ洗練された印象がさらに増しています。
いや、洗練されたのは何も靴のデザインだけではありません。輪郭を描き出す木型も、しっかりリファインされましたよ! 「358」と名付けられたこの木型は、同メーカーのパリ支店から提案され、最近10年間のクロケット&ジョーンズを代表する木型となった名作「337」をベースに、より現代的な造形にしたもの。確かに同一サイズの「337」のものに比べると、つま先が若干長く、かつ低く落ち込んでいるのが解ります。
そう、簡単に申せば、21世紀になって以降すっかりお馴染みになった、いわゆる「ロングノーズ」の最新版なわけです。が、トレンド最重視でともすれば下品なだけのものが溢れがちなこの造形にあって、この「358」はイギリスの靴らしい質実さががっちり残っている点は、特筆に値するでしょう。流行を確実に見据えそれを拒まないながらも、核心の部分では伝統的な造形にきっちりまとめ上げてしまう「さじ加減の良さ」。これこそクロケット&ジョーンズ一番の得意技、真の伝統であって、様々なメンズブランドのOEM生産に長年携わっているだけのことはあるなぁ…… と思わず唸ってしまいます。
前にも紹介したとおり、 Vフロントのプレーントウは履く場や服装をあまり選ばないスタイルなので、この靴も、「伝統を重んじながらも、変化を恐れない」姿勢で履いていただきたい! 現代的な雰囲気が目立たず加味されたものであれば、グレイ系のスーツスタイルにはもちろんのこと、春から夏には欠かせない綿や麻のジャケット、冬場の友である茶系のツイードジャケット、どれにも合わないはず、ありません。
また、クロケット&ジョーンズの中でもより上級なハンドグレードですから、革質も抜群に良く、シューケアもやり甲斐がありますよ。確かに現代的なフォルムだけど、この靴は時が経っても古臭くは見えないでしょうから、自分の「色」そして自分の「身体の一部」にしてゆく楽しみを、存分に味わってみて下さい。
【クロケット&ジョーンズ/Sidmouth】
■色・素材 : 茶(スムースレザー、写真)。他に黒(スムースレザー)もあり。
■サイズ : 6~9ハーフ 0.5サイズ刻み いずれもDウィズ
■価格 : \86,100(税込み)
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