独創的で合理的なオーダーシステム
”HIRO YANAGIMACHI”の靴は、スタイルそのものは極めて普遍的ながら、よくよく眼を凝らすと物凄く斬新な試みにも果敢にチャレンジしているのが大きな魅力です。この外羽根式プレーントウもその典型例。どこが異なるのか、皆さんわかりますか? |
”HIRO YANAGIMACHI”の靴は、言うまでもなく一足ごとに完全に手作りされる「誂え靴」なのですが、そのオーダーの仕組みは他のビスポークシューズとは若干異なり、以下のようなプロセスを経て作成されます。
- まず顧客の足をチェック・採寸します。
- その上でフィッティングサンプルの靴を履いてもらい、それを目安に木型製作のアプローチ方法を判断します(*)。
- デザインサンプルの靴や過去に作成した靴をおさめたスタイルブックを参考にしながら、靴の基本的なデザインを決定します。
- アッパーやソールの素材や色、それに細かいディテールなどを決定します。
- 1.~4.をもとに木型を加工し、それをもとに靴を作成します。
- 製品が完成し、顧客のフィッティングを経て納品します。
A.モディファイ:ベース木型の各部位に着脱可能な革を「乗せ加える」だけで顧客の足にフィットさせることが十分可能な場合は、この方式をとります。各部位に乗せ加えた革がその顧客専用になります。価格の目安は1足\262,500~\315,000位です。
B.チャージ&モディファイ:ベースの木型に革を張るだけでなく、顧客の足にフィットさせるのにその一部を「削る」必要がある場合は、この方式をとります。ベース木型が削られその顧客専用に変形します。価格の目安は1足\315,000~\367,500位です。
C.フルスクラッチ:A.やB.では対応できない複雑な形状の足の場合は、木型やデザインパターンを「ゼロから起こす」この方式をとります。独自の木型を元から作成し、製作途中で仮縫いを行う必要があります。価格の目安は1足\367,500~\420,000位です。
ちなみに上記の価格は税込みで初回オーダー時のもの。目安価格の振れ幅は、木型の加工具合や使用するアッパーの素材、あるいは選択したオプションなどによります。また2足目以降の価格は注文内容により若干変化します。例えば1足目をB.の「チャージ&モディファイ」で注文した場合、全く同じ木型で対応可能であれば、2足目では木型の加工分とチャージ分が上記の価格から差し引かれます。
このシステムの嬉しいところは柳町氏が上記のA.~C.を、あくまで「どの方式をとれば、顧客の足に一番フィットする靴を提供できるか?」つまり「アプローチの違い」として提供してくれている点でしょう。だからいずれの方式を採用しても出来上がった靴に「品質の上下」は存在しません。「モディファイ」で十分済んでしまう足を持つ人に「フルスクラッチ」は強要しないわけです。そう、この仕組みは作り手以上に、顧客に対して深い配慮がなされた独創性・合理性を備えているのです。
実はこの靴、外羽根式としては大変珍しいホールカットホールカットなのです。外羽根式でこれを作ろうとすると、レースステイの下端がデザイン上処理し切れず、革を継ぎ足さざるを得なくなるのがオチなのですが、柳町氏は羽根の先端にスキンステッチを僅かに入れ、ここに余分な革をおさめることでそれを見事にクリア! |
最後のページでは、”HIRO YANAGIMACHI”の靴のスタイル、そして柳町氏自身の魅力を探ります!