男の靴・スニーカー/ドレスシューズ

謙虚でたくましい、EMORIの靴(4ページ目)

今回は靴職人・江守大蔵氏が一人で作り上げるEMORIの靴を採り上げます。履き手が本来持つ雰囲気に逆らうことなく自然に溶け込んでしまう彼の靴には、他の誂え靴とはまた異なる重層的な魅力が備わっています。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

「覚悟」のできている人が、一番似合います!

ジャケットやコートと共に
EMORIの靴に似合いそうなジャケットやコートをピックアップしてみました。他人に対して必要以上の豪華さや緊張感を与えない、「ありのまま」の装いができる人には、結果的に良い趣味のものが集まってくるのです。


前述したとおり、既製靴にたとえるとオールデンやかつてのチャーチ、それにかつてのJ.M.ウエストンを髣髴とさせるEMORIの靴ですが、相性が良い装いもやはりそれらと共通でしょう。すなわち本来の「トラッド」というカテゴリーに代表されるような、素朴でやや無骨ながら、案外角は取れていて突っ張った感じを受けない、重層的な色彩の装いです。イタリア的な華やかさがさらに加わった「クラシコ」的な装いとは、微妙にズレるかな?

トラッド…… そう、近年特にアメリカ的なものが久しぶりに脚光を浴びている、あれです。ただ、昨今のその潮流に追随しただけの服は、個人的には全然トラッドに見えないのですが…… どうしてかな? って考えたことがあるのですが、どうやら「色使い」に決定的な違いがあるようです。この種の服は発色が冴えすぎて、むしろ平板かつ人工的に見えるのです。明るい色であっても、かつてのその種の服には確実に存在した重層的な「温かさ」がないから、着る人にその色が沁みこんでゆかず、装いが浮気で薄情になる。

濃い色なんてなおさらで、モノトーンが深みに欠けたそれこそ白黒の二者択一にしか見えない、閉鎖的で威圧的な寂しささえ感じるのです。このような現状は、色に対して個々に思索することが許されず、装いを瞬間瞬間で判断せざるを得ない、せちがない世の中を象徴しているのでしょうが、そこにあるのは冷めているのに妙に脂ぎったものだけであって、それが「粋」や「色気」の今日の正体であるとしたら、全く残念でなりません。

そのような環境のもと、本来のトラッドを構成する重要な要素である「自然さ」、すなわち自己の良い面も悪い面も理解し尽し、それを他者に対し包み隠さず、装いと一体化して謙虚に表現することは、かなりの努力と、それに覚悟を要するようになってきています。わざとらしい瞬間芸でしかない「ハズシ」ではなく、「完璧さ」を十分維持しつつその上に突き抜けて装うことを意味するからです。いや、覚悟といっても決して身構えるようなものではありません。たとえると、スーツに合わせるシャツにアイロン掛けを行う代わりに、僅かな霧吹きと自然乾燥だけで形を整えるのを楽しめるような「覚悟」です。

それが備わった方ならば、EMORIの靴はきっと、自分自身が入りこむ「隙間」を残しておいてくれている、大らかで懐の深いものに感じるはずですよ。
「顧客の雰囲気に、いつのまにか馴染んでしまう、沁みこんでしまう靴を作るよう心掛けています」
そう謙虚に語ってくれた江守氏が作るのは、履くのが楽しみになる、そして履くと楽しくなる靴ばかりですから。



【EMORI/ビスポークシューズ】
■納期
発注~仮縫い:約2ヶ月
仮縫い~完成:約2ヶ月
(以上は注文状況により変動します)

■お問い合わせ先
EMORI
住所:〒143-0021 東京都大田区北馬込2-36-4
地図:Yahoo! 地図情報
最寄り駅:都営地下鉄浅草線馬込駅A3出口から徒歩約5分。または東急大井町線荏原町駅から徒歩約7分
TEL/FAX:03-3771-6603
HP:EMORI CUSTOM SHOEMAKER
営業時間:12時~20時 年中無休(不在の場合があるので、事前に電話にてご確認いただけると助かります)

Special thanks go to Mr. Ken YAMAMOTO, the proprietor of BOSTON TAILOR.
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