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普遍の美。ジェイソン・エイムズベリーの靴(2ページ目)

イギリスの靴職人、ジェイソン・エイムズベリー氏が、2007年1月下旬に東京で受注会を催します。当ガイドサイトがリニューアルした際の最初の取材先でもある彼の靴の魅力を、改めて探ってみましょう。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド


見栄えと両立させる、高度な「ネジレ」

内羽根式のセミブローグ
こちらは内羽根式のセミブローグです。紐を通すレースステイの部分に注目。足の形状に合わせて微妙に外踝側に傾かせているのが、お解かりいただけるかと思います。


ジェイソン氏の靴のもう一つの特徴は、甲周りの独特のシェイプにあります。上の写真の靴では一目瞭然ですが、靴紐を締めるレースステイの部分が外踝側に傾いていますよね。靴単体で見ると「おやっ?」という感じなのですが、これも顧客の足の骨や筋肉の位置や形状、それに動きを熟慮した、意味ある「ネジレ」なのです。

実際に足を触ってみると解るかと思いますが、足首の部分からつま先にかけて、大概の人の足は外踝側に微妙に傾いています。これにできるだけ忠実に靴を作ろうとしているわけです。ただしこの「傾き」はそれこそ人によって千差万別。同じ人でも左右で状況が異なる場合も多いので、完成した時点では誰が履くのか解らない既製靴では、なかなか取り入れられない要素なのです。

ジェイソン氏の靴は、誂え靴の中でもこの「ネジレ」「傾き」を敢えて思い切って採り入れている部類に入ると思います。なので靴単体でみると不思議な印象を持たれるかも知れませんが、ひとたび持ち主が身に着けると、全く違和感無く見えるマジックに変化するわけです。

また彼に言わせると、「傾き」を入れて靴を作成したほうが、顧客の足の動きに忠実であるがゆえに、余計な履きジワも出にくい=履きジワから亀裂が入りにくくなるので靴も長持ちするとのこと。勿論これらのマジックを可能にするのも、ジェイソン氏自身が前述の採寸からクリッキングまでを一人でこなす「フットワークの良さ」があってこそでしょう。


必要なのはお金以上に、心の余裕!

内羽根式のキャップトウ
ジェイソン・エイムズベリー氏が作製した内羽根式のキャップトウ。古典にして普遍のアーモンドトウが映える、最もイギリスの靴らしいスタイルと言えるでしょう。


先に挙げたロンドンの誂え靴店は、どこもその店特有の靴の雰囲気、俗に言う「ハウススタイル」を持っています。自らの装いや体格、それに自身の性格と、その店のハウススタイルが一致するかどうかを見極めること、それが靴の誂えの成否を握る重要な鍵と申しても過言ではありません。他人が履いていた靴がどんなに格好良かったとしても、それと全く同じ靴を同じ店で誂えても、必ずしも自分も同様に格好良く履けるとは限らないのが、誂え靴の難しさであり、また愉しさでもあります。

ジェイソン氏は以前の記事でも書いたとおり、出身がロンドンのジョン・ロブなので、彼の作る靴もやはりイギリスの伝統的・古典的なスタイルが前面に出てくる感があります。とは言っても、そのような伝統に無闇やたらとしがみ付いているわけでもなさそうです。

例えば、とある顧客から「恐竜をイメージした靴を作ってくれ!」と言う難題が出た際には、彼も大変悩んだものの想像力を働かして「作品」に仕上げ、その方に大変喜ばれたそうです。普遍的な様式美の本質がわかっているからこそ、それを綺麗に突き抜けることもできるのです。

もちろんこのような駆け引きは、誂えに相当慣れている方が愉しんでやっている訳で、ジェイソン氏曰く通常の注文の際は、上記の「ハウススタイル」を理解した上で、「どのようなスタイルの靴を作りたいか?」の他に、
  1. どのような場所に履いてゆきたいか?
  2. どのような服と合わせたいか?
  3. 日頃履いている靴や足にどのような問題点があるか?
が具体的に事前に整理されていると、傑作が出来上がる確率が大変高くなるそうですよ。

為替レートが円安ポンド高に触れている昨今、彼の靴もシューツリーを入れると1足約50万円と決して安いものではありません。が、靴に詳しかったり金銭的に余裕があったりする以上に、彼の靴が一番似合うのは、自らの足をどう「地」に結び付けるか? を落ち着いて考えられる、「心に余裕のある人」であることは、どうやら間違いなさそうです。今回パーティもあるようなので、迷われている方は、まずはそこで気さくに話しをして、彼自身の気風を知ることから始めて欲しいそうです!


■JASON AMESBURY氏のビスポークシューズ受注会
期間:2007年1月23日(火)~28日(日)
場所:エクセルホテル東急(井の頭線渋谷駅の真上)
金額:ポンド建て。発注時と納品時に2分割払いが可能。
シューズ1,850ポンド~ シューツリー300ポンド~
お問合せ先・受付:OLD HAT
  TEL/FAX:03-3498-2956 営業時間:12:00~20:00 定休日:無休

【関連データ】
■JASON AMESBURY
HP:http://www.amesbury.co.uk/
(英語)

【関連リンク】
イギリスの職人にきく、靴を誂える醍醐味
「メンズファッション ガイドサイト」 ビスポーク靴職人ジェイソン氏に取材!
【編集部おすすめの購入サイト】
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