ノーマン・ロックウェル(米画家)をテーマに、変わることのない、言ってみれば流行に左右されることのない靴をつくり続けて来た前田洋一。ぽっこりした木型、履き込めばアメ色に変わっていくヌメ革などなど、フランスのノミの市に転がっていそうな、何とも愛着のある靴。まさにノーマンの世界で、好きなレーベルのひとつだった。ひととなりも靴そのものであったかく、恵比寿に行く用事があると、ついつい彼のアトリエに顔を出してしまう。
その日もいつものように、狭い階段をのぼり、アトリエの扉を開けた。しかしそこにはスタッフの市原さんしかいない。「あれ、前田さんは?」「今、海外出張中なんです」念願の海外デビューに向けて、フランスの国際見本市「プルミエール・クラス」に出展したとのことだった。
素直に驚き、成功することを祈りながら、一方でその難しさはよーく理解していた。日本で生産した靴を向こうで販売しようと思うと、関税がかかり、ラグジュアリー・ブランドと変わらない価格設定になってしまうのだ。
ところがしょっぱなから注文がついた。そしてその後も精力的に海外見本市に出展し続け、販売先は今や7カ国、計11社にまで広がった。それは多分、海外の人は本物を見極める目をもっているということだと思うんだけど、それにしてもやっぱり驚いてしまう。
前田さんはさらに本格的な展開を目指し、今シーズンよりイタリア生産も始めた。関税の問題をクリアするためだけど、僕としては靴づくりに長けたイタリア製の「ショセ」ってのに単純に興味があった。そして嬉しいことにレディスのみだけどそのイタリア製、自分の店で限定発売するという。これはぜひぜひ、手にとってみたいものです。
*一番上のコレクションがイタリア生産。メンズ、レディスあり。レディスのみ、ショップで限定発売される。上から¥47,250、ウエッジソール¥34,650、Tストラップ¥45,150
問い合わせ先 プリュス・バイ・ショセ TEL.03-3463-7607
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