古い靴作りの洋書で研究も・・・。
福田さんの手によるハンドソーンウェルテッド製法の製作途中の靴。とても美しいですね~。 |
他にも驚いたことがあって、本棚には靴作りに関する古い洋書がずらりと並んでいる。もちろん飾りとしてではなくて、しっかり読んで研究し、実際に応用しているらしい。
たとえばエッジ(コバ)やヒールをアンティークフィニッシュにするときには、昔のレシピに基づいて材料を配合するといった凝りようなのだ。ほとんど錬金術師や宮廷料理人の世界なのだ(笑)。
福田さんのこういった古典志向は靴の土台である木型にも向けられている。前編でも少し触れたが、木型にねじれ(ツイステッドラスト)を採用している点だ。
これは20世紀半ばに考案された木型だそうだ。人の歩行はまず踵から着地するが、踵の外側に体重が移動し、最後に親指付近に移るという歩行方法から見出された、まさに理想的な木型なのである。
ただし機械に頼ったグッドイヤーウェルテッド製法の靴で見られることはなく、ビスポークシューズの世界でも現在はジェイソン・エイムズベリーとイギリスの2ブランドくらいと言われている。
というのも木型がねじれているためソールをつける作業ひとつとっても時間と手間がかかるため、理想的な木型とわかっていても採用する靴職人やメーカーが少ないそうなのだ。
カラゴテをあてているところ。この次にインクを塗ってワックスを溶かし込んでいく。 |
「昔は現在よりも靴職人の数も多く、それだけ凄い技術を持った職人も多かったと思います。現在のイギリスでは残念ながら、こういった伝統的な靴作りを守っている職人は少なく、合理的に靴を作る人たちがほとんどです。
たとえビスポークシューズであっても質よりも量。スピードの時代なんです。たくさん作ればそれだけお金がもらえますから(笑)。
私がノーザンプトンに住んでいたときに何度も靴の博物館に行きました。20世紀初頭に作られた靴はすべてにおいて素晴らしく、現在作られている靴で同等のものを探してもまず見つからないでしょう」(福田さん)
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