アントニオ・マウリッツィの秋冬もののサンプルより。 |
アントニオ・マウリッツィは1972年にイタリア中部のマルケ州コリドニア市で創業したファミリー経営のブランドである。
創業者のアントニオ・マウリッツィ氏は11歳から靴の工場で働きだし、23歳で独立。当初は3人の従業員と車一台しかなかったという。
ご存知のようにマルケ州は、靴の工場やラストメーカーがひしめき合う靴生産の聖地のようなところ。現在アントニオ・マウリッツィの工場では一日あたり450足ほど作っている。
数多くあるイタリアブランドのなかでもコストパフォーマンスに優れ、ファッション性と履きやすさが魅力のブランドである。
ラスト(木型)の種類も豊富
ディレクターのマウロ・アンドレオッジ氏は、アントニオ・マウリッツィ氏の娘さんと結婚されている。イタリアらしくファミリー経営です。 |
今回来日したディレクターのマウロ・アンドレオッジ氏によると、春夏に10ラスト(木型)、秋冬に10ラストを作るそうだ。日本やイギリスの老舗靴ブランドからすると随分多い数である。
なぜこれほど多くのラストをつくるのかというと、やはりファッションの流れに連動していて、世界中のマーケットに合わせているからだ。それだけまわりが期待しているということでもある。
ラストを作るラストメーカーはマルケ州だけで、なんと100社ほどあるそうで、同社はそのうちの5社と取引している。現在社内には契約している靴デザイナーが2名いて、彼らがつながりのあるラストメーカーを選ぶそうだ。
つまりデザイナーが変わればラストメーカーも変わるのである。なんとフレキシブルな世界・・・。ちなみにオーナーの息子も工場内で靴のデザインを担当している。
製法はマッケイとブレイクラピッドが中心
イギリス靴の製法はほとんどグッドイヤーウエルトなのだが、さすがイタリアだけのことはあり、マッケイ60%、ブレイクラピッド25%、セメンテッド15%の割合で生産している。
なかでもブレイクラピッド製法はソールを二回縫うため手間がかかるが、それだけ構造的には強く、履き心地もいいそうである。また、何日間もラストを入れておくためアッパーの馴染みもよいとのこと。
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