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イタリア3都市ジュエリー博物館めぐり-1 ローマ、ヴィラ・ジュリア博物館(2ページ目)

ジュエリー・フリークの知識欲をそそる、ミュージアム所蔵の金銀宝石類をめぐる集中連載。まずは永遠の都ローマから、穴場的存在《ヴィラ・ジュリア国立エトルリア博物館》をご案内しましょう。

執筆者:本間 恵子

第20室のガラス・ケースは、粒金やフィリグレを中心にしたエトルリアの財宝で埋め尽くされていますが、「BOTTEGA CASTELLANI(カステラーニ工房)」と書かれたジュエリーには注意を。遺跡からの出土品に全くそっくりではありますが、これらはカステラーニ一族の手による模作なのです。

(ヴィラ・ジュリアのガイドブックより)
カステラーニ工房の製作したペンダント。
ギリシャ神話の男神アケロオスがモチーフ。
粉を吹いているように見える髪とヒゲの部分が、
粒金でびっしりと埋め尽くされています。

カステラーニは、謎の多い古代人の技法とデザインを徹底的に研究し、完璧にその作風をコピーしました。その気迫のこもった模倣ぶりと1点1点の完成度の高さは、目を見張るばかりです。しかし、自らのテイストを加えずにひたすら古代の再現に徹したあたり、この一族はひょっとしたらデザイナー気質よりも、職人気質の方が勝っていたのかもしれません。カステラーニが自己主張の旺盛なデザイナーなら、古代のスタイルに自分流のアレンジを加えずにはいられなかったでしょうから。

たとえば15世紀の建築家、アンドレア・パラーディオは、古代ローマの建築様式を研究し、それを当節風にねじまげて「パラーディアン・スタイル」なる様式を確立、名声を得ました。大建築家パラーディオは、単にコピーするだけではどうにも我慢がならなかったとみえます。

しかしカステラーニは、もっぱら古代の完全なコピーを作ることに大いなる喜びを感じていたようです。どうやって作るのか、誰にもわからなかった粒金でさえ、カステラーニは見事に復元してしまいました。しかし、せっかく完成させた粒金の復元方法を、彼らは後世に伝えることをしなかったのです。フォルチュナート・ピオ、アウグスト、アルフレードの3代でカステラーニの店は閉じ、一子相伝の秘技ともいうべき粒金は、再び謎のジュエリーとなってしまいました。

ガンコ一徹職人、カステラーニが熱中した模作と、彼らが心から愛したエトルリアの真作。これらを比べながめる面白さは、ヴィラ・ジュリアならではの楽しみです。時の彼方にうずもれようとしているゴールド・ジュエリーの至芸が、この1室に集まっているのですから。

第20室の手前に設置されたカステラーニ親子の胸像。
右が創業者のフォルチュナート・ピオ、
左は息子のアウグストです。
一族にはこのふたりのほか、
フォルチュナートの長男アレッサンドロ、
アウグストの長男アルフレードがいました。
宝飾店はアルフレードの死去にともない、
1930年に閉鎖。

■ヴィラ・ジュリア国立エトルリア博物館
Museo Nazionale Etrusco di Villa Giulia

住所:Piazzale di Villa Giulia, 9
電話:06-3201951
開館時間:9:00~19:30(火~土)、9:00~20:00(日・祝)、月曜休
入場料:4ユーロ
アクセス:地下鉄A線Flaminio駅から徒歩15分、95番バスPiazzale del Fiocco停留所から徒歩10分

上記のデータは、2002年8月に取材した際のものです。

 

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