ローマで金銀宝石類がいやというほど見られる場所といったら、何といっても聖ピエトロ寺院の宝物館。しかし、ここはいつ行っても大行列で、入館するのに数時間待つことも珍しくありません。というわけで今回は、穴場の《ヴィラ・ジュリア国立エトルリア博物館》をご紹介しましょう。

ヴィラ・ジュリアはボルゲーゼ公園のはずれにあり、足の便の悪さから、ハイ・シーズンでも人影はわずか。1550年代に教皇ユリウス3世(在位1550~1555)の別荘として作られたこの建物には、緑あふれる中庭や涼しげなニンファエウム(泉水)があり、ローマ中心街の喧噪を束の間忘れさせてくれます。

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ヴァザーリら複数の芸術家がデザインし、
ミケランジェロも参加したという建物。
ヴィラ・ジュリアとは、
ユリウス(イタリア語でジュリオ)の
別荘(ヴィラ)という意味です。

ここに展示されているのは、エトルリアの古代遺跡から出土した発掘品。エトルリア人は北イタリアを中心に繁栄した民族で、紀元前8世紀から6世紀に最盛期を迎えましたが、その言語や社会はいまだに多くが謎に包まれたままです。この博物館で最もよく知られている収蔵品は「夫婦の棺」と呼ばれるテラコッタ製の美しい棺で、第9室にてこれをたんのうした後は、少し足を速めて建物2階にある「カステラーニ・コレクション」の部屋へ。

チケット売場で販売されている英語のガイドブック。
館内にはイタリア語のそっけない解説しかないので、
これを買ってから入館することを
おすすめします(13ユーロ)。
表紙に載っているのが、有名な「夫婦の棺」。

カステラーニといえば、アンティーク・ジュエリーのファンにはもうおなじみの名前。19世紀に活躍した、ローマのジュエリー・デザイナー一族です。ちょうど博物館エントランスの真上に当たる第20室には、カステラーニが蒐集し寄贈したエトルリア人の驚くべき金細工が集められています。

まずは壁面にびっしりと掛けられた、純金の装飾品にぐっと目を近づけてみてください。きわめて緻密な文様が、砂のように細かい金の粒で描き込まれているのに気づくはずです。これは「粒金(りゅうきん)」という技法で、エトルリア人がこれらをどのようにして作っていたのか、実は現在でもよくわかっていません。こんな微細な金の粒を台座に溶接しようとすると、どうしても粒がべったりと溶けてしまうのです。

極細の金糸で織り上げたような、おそろしく細かい線条細工も注目すべきポイント。この技法は「フィリグレ」と呼ばれ、今でも行われていますが、これほど念の入ったデリケートな作品を作ろうという職人は、現代にはいないでしょう。今から2千何百年も前に、こんなスーパー・アルチザンたちがいたとは…。

第20室はそう広い部屋ではありませんが、
ガラス・ケースは
エトルリアの装身具の優品で埋まっています。

第34室にあるバルベリーニ墳墓からの出土品。
紀元前680~660年のものとは思えない凄さです。
翼のあるライオンがびっしり並んでいて、
表面の微細な模様が、問題の「粒金」。
幅20センチ以上ある大きな装身具ですが、
どのように身につけたのかは謎のまま。

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