良い絵本……文章や絵の特徴

良い絵本……文章や絵の特徴

私たちが絵本を読むとき、絵本が子どもたちの成長を手助けすることと、子どもたちが純粋に絵本を楽しむことの両方を期待します。そこで、この2つの期待に同時に応えられる絵本が、良い絵本と言えるでしょう。

そう考えると、良い絵本には以下の条件が当てはまります。

  • わかりやすく正確な絵がある
  • 聞きやすい文章で書かれている
  • 絵と文章のバランスがとれている
 

良い絵本の特徴1.わかりやすく正確な絵がある

まずはじめにクイズを1つ出題しましょう。

ぐりとぐら

表紙をじっくり眺めてお考え下さい  【画像提供 福音館書店】
『ぐりとぐら』 中川李枝子/作 大村百合子/絵 福音館書店

上の作品は、1963年に『こどものとも』で発表されて以来、9ヶ国語に翻訳され、国際的にも大変人気の高い絵本『ぐりとぐら』です。描かれた2匹のねずみのうち、どちらが「ぐり」でどちらが「ぐら」でしょうか?

答えは、きちんと表紙に書いてあります。題名の文字の色が違いますね。正解は、青い帽子のねずみが「ぐり」、赤い帽子のほうが「ぐら」です。理由をこまごまと説明しなくても、わかりやすい表紙絵が伝えたい内容を物語っています。もちろん、本文も例外ではありません。下のシーンをご覧ください。

絵が文を補完している好例 クリックで拡大(c) Rieko Nakagawa,Yuriko Yamawaki,1967

絵が文を補完している好例(c) Rieko Nakagawa,Yuriko Yamawaki,1967

ぐりとぐらが大きな卵を運ぼうと、棒に卵をしばりつけています。このシーンの前ページでは、2匹は卵を運ぶために「かついでいこうか」、「ころがしていこうか」などと相談していますが、「棒にひもでしばって運ぼう」とはひと言も言っていません。けれどこの絵を見ると、2匹の表情や背伸びをしている様子から、2匹が卵を運べず困っていることやどうやって運ぼうか一生懸命考えて工夫をしたことが感じられます。文章で書かれていない部分を絵が物語り、絵本の世界を拡げているのです。

お母さんが絵の良し悪しを判断する目を養うために、時には文章を読まずに絵だけを丹念に追いかけてみるという読み方もあります。字に頼らず絵だけを見ることは、絵それ自体が語りかけてくるものを受け取りやすくなります。このやり方で違和感を感じない絵本の絵は、良質のものが多いです。 
 

良い絵本の特徴2.聞きやすい文章で書かれている

瀬田貞二の訳が読んでも聞いても心地よい『げんきなマドレーヌ』【画像提供Amazon】

瀬田貞二の訳が読んでも聞いても心地よい『げんきなマドレーヌ』ルドウィッヒ・ベーメルマンス作 瀬田貞二訳 福音館書店【画像提供Amazon

絵本を読んでもらっている子どもたちは、本の中の絵と読み手の声だけを頼りに、絵本の世界に入り込みます。子どもなりの集中力で、様々な想像が生まれ、時に主人公そのものになりきったりするわけです。この集中を助けるためには、リズミカルで聞きやすい文章が不可欠です。

また、黙読した場合と声に出して読んだ場合で、印象が全く異なる絵本があります。聞きやすいということは、読みやすいにつながることも多いもの。実際に声に出し、耳で聞きながら、言葉のリズムや響きを味わってみましょう。違和感がなく、心地よさを感じることができれば、その絵本の文章に及第点をつけてよいでしょう。

 

 

良い絵本の特徴3. 絵と文章のバランスが取れている

上質の絵と文が互いを高めあう【画像提供Amazon】

上質の絵と文が互いを高めあう『スーホの白い馬』大塚勇三再話 赤羽末吉絵 福音館書店【画像提供 Amazon

絵だけで絵本を見てみるという方法で絵本を眺めた後に、改めて文を読んでみると、絵と文の関係がしっくりこない場合があります。絵も文章も素晴らしいのに、なぜか落ち着きが悪いのです。どうやら絵と文章のバランスが悪いようです。また、文と絵が食い違っているということも意外に多く見かけます。

絵本は、文が絵を動かし、絵が文を支えるものです。両者とも質の高いものができあがったとしても、それだけでは不十分で、お互いに補完しあってはじめて良質な作品として成り立ちます。絵本編集者の松居直さんは、文+絵=絵本ではなくて、文×絵=絵本であるとおっしゃいます。わかりやすく正確な絵と、聞きやすい文章があって、さらに両者のバランスがうまく取れてこそ良い絵本といえるでしょう。

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