コンビニの防犯カメラ
帰り道は暗い道
女は迷わずコンビニに入って行った。男は慎重に道路の右側に寄ってゆっくりとコンビニをやり過ごした。外を通る人の姿も店の防犯カメラに映るだろうことを考えて、手に持った新聞紙で左手で扇ぐようにした。男は痩せ型だが平均的な身長で、上半身は白の半袖シャツ、下は黒っぽいズボンとこれもまた一般的で特徴がない。
コンビニを「コ」の字に避けるように行過ぎると、隣の建物の駐車場が開けている。明かりはごく少ない。敷地に沿ったフェンスがあるが中央部分は開いたままだ。男はざっと見回して監視カメラがないことを確認すると、自然な足取りで駐車場の中に入った。コンビニのごくそばだが暗いので人がいるかどうかはすぐには分からないだろう。
タバコを吸いたいと思ったが火をつけると目立つ。我慢をして耳を済ませた。店の出入りの際に鳴るチャイムがハッキリと聞こえる。出てきたのはラフな格好をした若い男だった。駐車場にいる男にはまったく気づいていない。雑誌の立ち読みをしているのか、あるいは買い物で迷っているのか、女が出てくるまでけっこう長く感じた。だが、チャイムが鳴り、店員の「・・ございました~」と声が聞こえた。女が出てきたのだ。
女は変わらず耳にイヤホンをつけており、手にバッグと買い物袋をぶら下げてもう一方の手で携帯電話を開いていた。男は風のように駐車場を出て女の後をつけた。さりげなく駅の方向を見たが誰も歩いていない。女は道の行く手も左右も後ろも振り返らない。耳に音楽、手元にケータイと、まったく周囲に気を配っていない。あきれるほど無警戒だ。
軽やかな音楽が鳴ったと思ったら、携帯電話を見ていた女が通話を始めた。
「うん。あたし。今? もうじき家に着くところ。うん。うん・・・」より足取りがゆっくりになって男もペースを合わせるのがかったるいと感じた。
「あ、もう着いたから。またメールするね。じゃね、バイバ~イ」
女は2階建てのアパートの入り口を入ると壁に備え付けられた集合郵便受けを開けたらしく、カチャンと扉を閉める音がした。
男は、アパートの入り口を行過ぎてからすぐに立ち止まった。女の靴音が聞こえるのだ。耳を澄ませた。外階段で2階に上がって行くヒールの音が聞こえる。それから男はサッと小走りに2階のベランダ側が見通せる位置を見つけた。5世帯あるようだ。うち2軒は明かりがついている。残りの3軒は暗いままだ。すると、一番奥の部屋の明かりがついた。きっとあの部屋だ。201号室か205号室か。
3p.個人情報入手
4p.女の自己防衛ポイントチェック