早期教育・幼児教育/シュタイナー教育

シュタイナー教育とは?ルドルフ・シュタイナーの教育理念とその特徴

シュタイナー教育とは、哲学者・思想家のルドルフ・シュタイナーの理念を基にした教育方法のことで、日本でもいくつかの教育機関で採用されています。このページでは、その基本理念を3つの観点(4つの構成体、七年周期説、4つの気質)から解説します。

上野 緑子

執筆者:上野 緑子

幼児教育ガイド

シュタイナー教育とは?

シュタイナー教育の基本理念って?

シュタイナー教育の基本理念って?

シュタイナー教育という言葉を聞いたことがある人は少なくないのではないでしょうか。シュタイナー教育を採用している幼稚園や小中学校、高校は日本にもあるのですが、どういう教育が行われているのか詳しいことは分からないという方も多いかもしれません。
   

ルドルフ・シュタイナーとは

ルドルフ・シュタイナーは、1861年、オーストリアに生まれ、子どものころから哲学と文学に興味を持ちましたが、工科大学に進み、自然科学を専攻します。

しかし、ゲーテから強い影響をうけ、哲学者、思想家となり、アントロポゾフィー(人智学)と呼ばれる思想の創始者となりますが、この思想から生まれたのが、「シュタイナー教育」です。シュタイナー自身が提唱したこの教育思想は、ドイツでは一般にヴァルドルフ教育学と呼ばれています。

シュタイナーは哲学者であり思想家ですので、シュタイナー教育は、難しい言葉や難しい内容もありますが、大きな流れをとらえたいと思います。
 

シュタイナー教育の「4つの構成体」

人間は4つの構成体で形作られていると言います。

■物質体(0歳に生まれる)……体そのもので、私たちの体も、引力の法則にしたがって上から下に落ちる鉱物界の物体。

■生命体(7歳ごろに生まれる)……引力の法則に逆らって下から上に伸びる力、起き上がる力、成長や繁殖をつかさどる力。

■感情体(14歳ごろに生まれる)……快・不快の感情も結びついた動き。

■自我(21歳ごろに生まれる)……考えたり、言葉を話したり、「私」という意識を持っていること。

シュタイナー教育では、この4つの構成体が人間にはあるのだ、ということを前提にしています。この中で眼に見えるのは「物質体」しかありませんが、心の眼を働かせれば「生命体」も「感情体」も「自我」も見えるはずなのです。見えなければ、シュタイナー教育は始まらないといわれています。
 

シュタイナー教育の「七年周期説」

シュタイナーの考えでは、人間は7年ごとに節目が訪れると言います。7歳までを「第一・七年期」、次の14歳までを「第二・七年期」、21歳までを「第三・七年期」と呼びます。

■第一・七年期(0歳から7歳)
 この時期の課題は、体を作ることです。幼児期に体がしっかり成長することが、やがて、意志力とか行動力を生み出すための源になります。

子どもは、きれいなものを見ることによって、きれいな心が身に付き、おいしいものを食べることにより、おいしさの味覚が分かるようになります。ですから、この時期は、子どもに吸収されてよいものを身の回りに置くようにします。

また、模倣の時期でもあるので、周囲の大人は、模倣されてよい存在でなければなりません。
シュタイナーの「七年周期説」

最初の7年は、その後の何十年より重要な意味を持っているとシュタイナーは言います

■第二・七年期(7歳から14歳)
この時期には、いろいろな芸術的刺激を与えることです。芸術体験によって、世界は美しいと感じる教育を目指します。

将来は思考力が必要ですが、この時期は感情体験として感じとらせるだけにしなければなりません。将来、豊かな感情を持つことを目指しています。

■第三・七年期(14歳から21歳)
この時期になって初めて、抽象概念・思考力によって、世界について広く深い認識を持てるようにします。これが、思考力、知力、判断力というものを作り出していきます。

この時期の大人は、長所も短所もある人間として、子どもに接することが大切です。ただ、教育者は、あるひとつの分野では権威をもって、子どもに接しなければなりません。

意志、感情、思考を順番通りに身につけ、バランスが取れた人を「自由を獲得した人間」だとシュタイナーは言います。

この「自由」というのは、自由放任の自由ではなく、成人して、世の中へ出て行く時、外の権威に頼ったり、世の中の動向に左右されたりしないで、自分自身の内部で考え、その考えたことには、自己の感情がこもっており、しかも、その考えたことを実行できるという行為まで伴う、そういう状態を「自由」というのです。
 

シュタイナー教育の「4つの気質」

シュタイナーは、気質は人間が生まれながらに持っている個性と親からの遺伝との混合によって作られると考えました。そして、気質を4つのタイプに分けました。
 
シュタイナーの「4つの気質」

4つの気質がバランスよく備わっていなければならないとシュタイナーは言います

■胆汁質
・自己主張がはっきりしている
・意志が強い
・決断力・行動力がある
・意思が通らないと癇癪を起し、激しく反応する
・些細なことで周囲と衝突を起こす
・自分の能力が認められると、行動力集中力を発揮する
・土を踏みつけるようにしっかり歩く

地水火風の4つのエレメントでいうと、火の要素、色でいうと赤

<接し方>
子どものやっていることに注目し、関心を示すこと。
少しハードルの高い課題を与える。簡単な課題を与えると自信過剰になってしまう。その子どもが尊敬する大人がいることが必要で、それで自制が働く。エネルギーを発散させるはけ口が必要。

■憂鬱質
・物事を暗く悲観的に考える癖がある
・非社交的で孤独
・敏感で傷つきやすい
・自分に対してすごく関心がある
・懐疑的な態度
・歩き方は重たく、引きずるような感じ

地水火風の4つのエレメントでいうと、土の要素、色は紺や紫

<接し方>
大人が辛い体験を話すと、共感を感じる。悲劇を経験した人を愛するこのタイプは、そういう出会いがないと孤独感を持ってしまう。

■粘液質
・休むこと、食べること、眠ることが大好き
・人から注目されたくない、放っておいてほしいと思っている
・おっとりしている
・支持はきちんと受け、正確にこなすが、時間はかかる
・一度やる気を起こすと、持続し、長続きする
・ゆったりした確実な歩き方をする

地水火風では水。色は緑。

<接し方>
大人が興味をもっていろいろなことに気づくのが大切。しかし、気づいたことを子どもに教えることは、子どもには迷惑な行為になる。子どもは親の反応に刺激をうけ、自分から関心を持つようになる。

■多血質
・いろいろなことに関心を持ち、一つのことにじっくり取り組むことができない
・楽天的で、物事を肯定的にとらえる
・活気に満ち、陽気
・環境と自分の関係が大事だから、人当たりもよく、やさしい
・刺激されやすく、快不快、喜びや悲しみに対して敏感
・新しいものに関心を持つが、長い間集中できない
・足取りは、飛び跳ねているような軽やかな感じ

地水火風でいうと風。色は黄色。

<接し方>
せかせかしているので、遊ぶ時に、大人が、その子どもより、少しゆっくりめに導いてあげる。一方、それに相反する方法もある。その子ども以上にせかせかし、子ども自身に気付かせる方法。

注意しなければならないことは、子どもがどれか一つの気質だけであることはなく、4つの気質を持ち合わせているということです。ですから、子どもの、その時々の気質に合わせて、対応することが必要です。

【参考文献】
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