葱商が守り続けた千寿葱とは?
持つ手の指と比べると立派さが伝わります。
この千寿葱、実は約二百年前から江戸の食通をうならせてきた極上の葱です。特に明治時代に続々と生まれた鍋屋の間で、「飛び切り甘くて煮崩れをおこさず、それでいて口の中に入れるととろける葱がある」と評判になり、蕎麦屋の間では「薬味にすれば一本でほかの葱の倍以上取れる」と言われ、瞬く間に東京中の鍋屋、蕎麦屋、焼き鳥屋、すき焼屋など、葱を多く使う料理職人の間に広まったそうです。
何段にも積み上げられた立派な葱 |
先日お邪魔した葱市場には、極上の葱が積みあがり、競りを待ちかねていました。この市場は一般には公開されておらず、私は葱商の『葱茂』さんのご好意で、競りを撮影させて頂きました。周囲には葱の匂いが立ちこめ、競り場にいるだけで風邪が治りそうです。6時半の競り開始から約20分で山のような葱は競り落とされ、有名料理屋向けに車に積み込まれていました。
千寿葱が何故すごいのか?
千寿葱を作っている農家は5軒ほどです。歴史のある農家になると、6代目という方もいらっしゃいます。今回の取寄せは、その6代目金次郎氏の千寿葱です。しっかりした根が千寿葱を育てます。 |
特に粘土質の畑の葱は根が伸び難いので、葱が根を伸ばす為に頑張るため、しっかりした丈夫な根が張り、葱本体もうまくなるようです。
幾重にも巻いた葱の切り口から水分が湧き上がります。 |
千寿葱を食す
葱が主役の味噌汁は素晴らしい味わい |
今回は葱本来の味を確かめる為に、焼き葱の味噌汁を作りました。
じっくりと遠火の近火であぶります。 |
千寿葱のうまさは複雑です。
まわりの白い部分と中央部の芽の部分では、食感も味も全然違います。白い部分はうまさと香りが強調され、中心部分は甘さが際立ちます。かといって、下仁田葱のように甘さ一辺倒ではなく、辛さも秀逸です。
驚くことに緑の部分も柔らかく、薬味としても十分に使えます。美味しい葱は青い部分まで美味しいと言う意味では、西の九条ネギVS東の千寿葱 という感じです。
立派な箱に入った最高級葱です。 |
立派な化粧箱に入って3500円ですが、ご馳走と思えば安いもんです。箱に入れて日の当たらない冷暗所に立てておけば、1週間はまったく問題ないです。
千寿葱であれば、1人毎日1本は軽く食べてしまいます。18本だとして、家族3人で1週間で完食です。冬場の1月~3月の間が、千寿葱が一番美味しい季節です。
風邪の予防にも葱は大変良いようです。
江戸から続く、伝統野菜。 さすがに故池波正太郎先生が愛して止まなかった千寿葱です。きっと江戸の鬼平も千寿葱と軍鶏でうまい鍋を食していたのでしょう。
取寄せ情報
葱茂担当:葱茂三代目の安藤将信さん
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