ハブにも勝つ!?
アカマタのカリスマ性の理由として「ハブをも食らう、絶対的な力強さ」というのがあります。これはいつもハブを食うわけではなく、ハブの幼体を食べていたという例が報告されたに過ぎません。しかし、人の命を奪うことができる猛毒のハブにも勝てる、というのは強烈なインパクトで、その情報が過大に一人歩きしてアカマタに国内最強のヘビ、というイメージを作り上げたのだといえます。
アグレッシブな性格から想像される「強さ」を裏切らないところに、アカマタが持つカリスマ性を感じます。
ウミガメを食う!?
その一方で、沖縄のある島では、毎年ウミガメが卵から孵化して、カワイらしい仔ガメが砂の中から出てくるのを、アカマタが待ち伏せして襲いかかって食う、という報告があります。この報告は、狡猾で圧倒的な「悪」のイメージをアカマタに付与しました。特に、図鑑に掲載された写真では、孵化したばかりのアオウミガメの仔ガメを飲み込みながら、他の数匹の仔ガメにも巻き付いたり、胴体で地面に押し当てて動けなくしているアカマタの姿が鮮明に写っていて、多くの両爬ファンに「アカマタ=悪者」のイメージを持たせてしまいました。
そりゃ、生まれたばかりのカワイイウミガメの赤ちゃんを飲み込んでいる姿ですから...
愛おしき悪役
こうやってアカマタは「大きくて強い」「凶暴」「狡猾」などの印象から、国内のヘビの中でヒールとしてのステイタスが確立していったわけですが、それだけがアカマタに「様」をつける理由ではありません。それは、アカマタがいつでも私たちフィールド好きの味方だからです。
私のように南西諸島でのフィールディングが大好きな人間は、年に数回は沖縄に行くわけですが、いつでもたくさんの生き物に出会えるわけではありません。
いくら山の中を駆け回っても、何の生き物とも出会うことができないことだっていくらでもあります。
またせっかくオーストラリアまで行っても、まったく両爬に出会うことができない、なんてことも当たり前なのです。
しかし、沖縄の森ならば、どんな過酷な条件でもアカマタは必ず私たちの前に姿を見せてくれます。
そして、いつも期待通りにアグレッシブで、出会った時は咬まれる、という緊張感を与えてくれます。それはまさに乾ききったフィールドという砂漠での一服の清涼剤なのです。そんな時に出会って、遊ばせてくれたアカマタに私たちは、いつも感謝を忘れません。
「やっぱ、アンタがいるからヤンバルに来ちゃうんだよね。また会えてうれしかったよ。ありがとう」
と。
私たちにとって、アカマタとはそんな存在なのです。
ちなみに飼えるの?
さて、アカマタは何もフィールドでの出会いだけが楽しみではありません。自宅での飼育も可能なヘビです。
基本的なヘビの飼育は、コチラの記事を参考にしていただくとして、このような基本的な飼育法でなんら問題なくアカマタは飼育ができます。
ただし、ハンドリングは基本的にできないヘビですし、夜行性ですから昼間に姿を見て楽しむこともできません。あるいは幼体は餌付けに苦労しますので、初心者には向かないヘビであることは覚えておいてください。
最後に
さて、もちろんアカマタの気の荒さは、彼らが敵に襲われるという恐怖心から来る行動であり、ウミガメの赤ちゃんを食うのも彼らが生きていかねばならないからです。このような彼らに対する悪役というイメージも私たちヘビ好きが勝手に作り上げたものです。ですから、それをおもしろがってテレビでオモチャにされることは決して感心できることではないことはわかっています。下手をすれば動物の虐待につながるような問題であるかもしれません。
しかし、仮にテレビに登場するあのアカマタが、彼らのことを熟知している人間が適切に扱い、しっかりとケアをされているとするならば、あのような紹介のされ方は、私は認めたいと思っています。
やはり、あれだけキャラが立っていて、期待に応えてくれる逸材なのですから、逆におとなしいヘビを姿だけ見せて大げさに騒ぎ立てる従来のやり方から比べれば、ずっとその価値観を引き出してスター性を持たせている、ある意味大切な使われ方と思うのですが、いかがでしょう?
確かに、私もその番組をはじめて観たときに「おおおお、アカマタがテレビに出とる!しかも、ちゃんとわかった使われ方をしているじゃん!ついにアカマタ、テレビデビューか!」みたいに興奮しましたから。
とにかく、彼らがスターにふさわしい扱いを受けていることを切に祈っています。
もし、みなさんがこの記事をご覧になった後で、テレビで活躍するアカマタを観る機会があったら、ぜひ「ガンバレ!アカマタ!!」とか「アカマタ、ご苦労さだね」みたいな応援とか労い言葉をかけていただければと、アカマタに成り代わりお願い申し上げます。
アカマタ様、ご尊顔 |