ストック期間は短くしたい
WCを集めるシッパーも、CB個体を生産するブリーダーも共通するのは「販売する個体をストックしておく期間は極力短くしたい」という本音はあるはずです。つまり商品である両爬たちは「生き物」ですから、ストック期間も「生かしておく」必要があります。死んでしまっては売れないわけですから。
現実には、シッパーの段階で個体をしっかりと飼育するレベルでストックするような手間はかけないでしょうが、それでも「死なせない」レベルで管理はしなくてはいけません。
そう考えれば、シッパーは「入手、即輸出」あるいはブリーダーは「繁殖、即輸出」としたいわけです。
ところが、輸出という面倒で金がかかる作業をしなくてはいけませんので、なるべく1回の作業で大量の個体を輸出したいですから、ある程度まとまった数を揃えるまでは動きがとれません。
そのタイムラグも国内への輸入の時期に影響を与える要因であると言えます。
両爬はいつでも採集できるわけではない!
WCの場合は、野生の両爬を採集するのですが、いつでも生息地に行けば採集できるというものではありません。例えば、わかりやすいように国内での国産種の流通を考えてみましょう。
もっとも顕著なのはサンショウウオでしょう。あまり個人的に好きな例ではないのですが。
ハッキリ言って、10月頃に「サンショウウオを探したいのだが」と言われても困ります。
こちらの記事を読んで頂ければわかるように、サンショウウオを探すのは大変な作業です。ところが、産卵期である3-5月頃に産卵地へ行けば、それこそたくさん立派な個体が採集できます。また、夏になれば幼生を大量に採集できてしまうわけです。
その結果、毎年3-5月頃にはショップに国内産の小型有尾類の成体が販売されたり、初夏にはトウキョウサンショウウオの幼生が流通したりするようになるのです。
これは、海外の野生の両爬にも当てはめることができます。
つまり、採集はその両爬が盛んに活動している時に行われているわけです。
じゃ、それはどういう時期かと言えば、四季がある国ならば春から初夏、雨季と乾季がある国ならば雨季の初め頃という感じでしょう。
また孵化直後は必然的に個体数も多いわけで、これも旬と言えます。四季がある場合は夏から初秋、雨季と乾季の場合は雨季の中頃から終わり頃が孵化のシーズンである場合が多いようです。
もちろん北半球と南半球では季節が逆転しますので、それも忘れてはいけません。
また季節に左右されずに行動する両爬もいますし、雨季と乾季の明確な境がない気候区分の地域もありますので難しいのですが。
結局、流通を考えるということは、その生き物の生態を知り、生息する環境に関心を持つという生き物飼育の根本と切り離せないわけです。
CBはハッチシーズン
一方、ブリーダーに頼るCB個体の場合は孵化シーズンに流通が集中します。基本的にブリーディングが盛んなのはアメリカやEU諸国で北半球ですから、ハッチシーズンである夏以降にCBベビーが得られるわけです。
これはもちろん採集個体から得られた卵を孵化させるファームハッチ(FH)も同様のことが言えます。
ただし、商品価値が高いカメ類は、ミドリガメで知られるように温度管理を行うことで繁殖期や産卵期、あるいは孵化日数をコントロールして真冬を除くほとんどの季節で流通させることが可能になっているようです。
またレオパなどは、孵化直後のベビーではなく、ある程度育った個体の方が商品として扱いやすいためシーズンを問わないようです。
輸送の安全性
両爬は温度によって健康状態が大きく左右されますので、本来は「輸送の時期」というのも考慮されるべきであります。つまり、長い輸送時間中に異常な高温や低温にさらされるようなおそれがある時期は、輸入業者としてはそのリスクを避けたいところです。もっとも流通量が増える夏にそのリスクを避けては輸入できませんから、現在はそこまでは考えられていないようです。
それに、最近は航空便がほとんどですから、夏の暑さは心配しなくていいですし。
そう考えれば、流通量が少なくて低温が心配な冬は流通のシーズンにはなりにくいというのも理屈としては納得できます。