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ワニガメとカミツキガメの発見事案(3ページ目)

去年のボールパイソン騒動の再来でしょうか。5月と6月になってから全国でぞくぞくと報告されるワニガメとカミツキガメの発見ニュース。今回は両爬の知識があまりない一般の方向けに解説しました。

執筆者:星野 一三雄

なぜ捨てられる?

先にも書きましたが、飼育している個体を捨てたり、あるいは管理不行き届きで脱走させたりすることに何の言い訳もありません。決して他人や社会、制度に責任を転嫁していいわけではありませんが、その理由として考えられる事情を考えてみましょう。

1.二つの異なる法律の施行
前の章の理由3で書いた二つの法律の施行のタイミングは、特にカミツキガメ飼育者にとっては飼育のモチベーションが下がる材料になりました。
つまり平成11年以降、カミツキガメは動物愛護法により飼育の許可を得なくてはいけない種類になりました。しかし、この時点でカミツキガメ・ワニガメ飼育者の一部は許可を得ずに飼育を続けてしまいました。ところが平成17年の特定外来生物法の施行により、カミツキガメは「飼育禁止」になり、それまで飼育していた飼育者が飼育を継続するためには届け出をしなくてはいけなくなりました。困ったのは許可を得ずに違法で飼育をしていた飼育者です。特定外来法では、それまでの愛護法とは比べものにならないほどの重い罰則がありますので、バレたらマズイ、と。じゃ、届け出をして合法個体として飼育を継続するか、というとそこで届け出をしたら今まで違法で飼育していたことを咎められてしまいます。そうなると特定外来法の施行の前に手放してしまえ、と。
ワニガメに関しても、今回の改正愛護法施行にあわせて、これと同様のことが起きた可能性が否定できません。
あくまで推測の域を出ませんが、背景としてあったのだと思われます。

2.カメ自身の特性

これは新聞などでも取り上げられているので、ご存じと思いますが、カミツキガメやワニガメの特性を十分に知らないまま購入し、飼育をしていた人たちが飼いきれなくなった、という事情があります。
つまり
・大きくなる
甲長の最大がカミツキガメで50cm、ワニガメで70cmです。もちろん飼育下ではこれほどまでにはなりませんが、20cm程度にでもなれば、愛情や思い入れがないと持て余してしまう大きさと言えます。

・攻撃的な性格
どちらも名前の印象もあるのかもしれませんが、少なくともカミツキガメの方は扱い方に十分な注意をしなければ大けがの危険性がある程度の性格の荒さはあります。本来の魅力であるとも言えるのですが。

・飽きられてしまう
これはワニガメに言えるのですが、その魅力的なルックスに惹かれて飼育を始めても狭い飼育容器内ではほとんど活発には動かないので飽きられてしまうことが多いカメとして有名なのです。

・安易に入手できた
さまざまな理由で日本のような狭い住宅事情では飼育に向いていないカメであるのに、一昔前はカミツキガメもワニガメも大量に、しかも安価に販売されていました。しかも、このようなカメの特性の説明もされずに、安易に販売されていたことも遺棄につながるこれらのカメの特性と言えるでしょう。

3.飼育許可の煩わしさ
これを書いてしまうと制度への批判みたいになってしまうので、あまり書きたくないのですが、事実としてあると思うのであえて書きます。
私は飼育に許可が必要な「特定外来生物」も「特定(危険)動物」も飼育をしています。もちろんどちらも許可を得ています。ところが、詳しくは別の機会に記事にしますが、特に「特定(危険)動物」の方は本当に許可を得るまでの行程が煩わしかったです。

特に改正前の動物愛護法のもとでの危険動物の飼育許可は、地方によってはかなり大変だったようです。
そうなると、そこまでして合法飼育をすることを選ばず、無許可飼育を選んだり、人知れず捨てる人も存在してしまう可能性は否定できません。何度も言いますが、それでも守らなくてはいけないのが法律なのですが。

4.飼育者の抗議
そんなことをしたって何の意味もないのですが、私たち両爬飼育者にとって不利に見えるような風潮にストレスを感じ、それを解消するためや反発して無言の訴えを気取り、わざと捨てて騒動を起こしている人間もいるのではないか、とも思えてきます。
例えば、ここ最近の騒動のうち、特に神奈川県のカミツキガメの例では、国道上で見つかったりしています。これは水生傾向が強いカミツキガメの生態からは考えにくいことです。
つまり、何者かが発見されやすいように放置した可能性も考えられなくはないわけです。

以上のような理由が、複数重なって今回のような騒動の原因になった遺棄が行われてしまったのでしょう。
何度も書きますが、捨てること自体が違法ですので、何の言い訳にもなりません。しかし、仮に遺棄した人物が見つかって、それが裁判沙汰にでもなった場合は、これらの背景を争点とする裁判になってしまうでしょう。

すでに遺棄の大量可能性は指摘されていた

しかし、行政側に責任が全くないとは私は思いません。特定外来生物法の時も改正前後の動物愛護法の時も、専門家の中から「無計画に飼育の規制を行ってしまえば、最悪の場合、それらの動物の大量遺棄が行われてしまうかもしれない」という危惧の声があがっていました。それに対して行政側は具体的な対策も考えずに「遺棄は違法行為であるから許されない。とにかくそういうことがないように啓発していく。」という姿勢しかありませんでした。
じゃ、本当に行政は、それが行き届くような最善ではなく最大の努力をしたのかと言えば、答えはノーでしょう。
先日、私は改正動物愛護法の施行を受けて、動物取扱業への登録のための研修に行ったのですが、来場していたイヌのブリーダーの中に「こんな法律は知らなかった。」「こんな非現実的な法律は守ることができない。」などと言っていた人が複数いました。
啓発、行き届いてないよ。

なお保護されたカミツキガメやワニガメは、元の飼い主が見つからなければ殺処分されます。
どうやら以前のように動物園や水族館が展示用に収容する余裕はないようで、どこも受け取りたがっていないようです。
基本的には生きたまま冷凍庫に入れて命を絶つそうです。
全国の飼育者のみなさん。今まで多くの思い出をくれた、あなたが飼育するカミツキガメがワニガメが、冷たい冷凍庫の中であなたの姿を探しながら死んでいくなんて目に遭わせないようにしてください。捨てないで下さい。

ちょっと最後は完全な私見になっちゃいましたが、と、まぁこういう背景が今回の騒動にはあったのです。
あまりよくわからなかったみなさんは、概要がつかめましたでしょうか?
まだ、何かこの問題に関してお聞きになりたいことがあれば、ご連絡下さい。

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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