優れた映像プロセッサーの採用で
大画面との画質の断層を感じさせない
液晶テレビの世界は企業連合が急進展しパネル生産の統合と共通化が進み、各社のセット(アッセンブルされた完成商品)、特に大画面テレビの性能差は、一時期に比べ小さくなっていますが、20V型以下の小画面は決してそうではありません。
その理由に、パネルを自社生産するメーカーでもこのクラスは国外の系列会社で生産したり、あるいはセット自体をグループ内の別会社が生産していたりさまざまだからです。その結果、このクラスの液晶テレビは出来にバラツキがあるのです。
映像調整して受信中のKDL-16M1。スタンダードモードから調整した。各社の液晶テレビに共通だが、出荷時画質ではバックライトを絞り、コントラストをMAXまで高めている。バックライトを環境に合わせて調整し、コントラストを絞りシャープネスと色の濃さを抑えていくのが第一歩 |
KDL-16M1は結論からいうと非常に手堅い製品で、ソニーの名にふさわしい立派な画質を備えています。
FPDベンチマーク(テスト信号や評価用映像を網羅したブルーレイディスク)、ブルーレイディスクの映画ソフト(『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』『イル・マーレ』)を視聴したり、一週間ほどかけて家族とWOWOWを含むデジタルBS、地上波放送(デジタル/アナログ)を見ましたが、どれをみても映像に破綻や気になるクセがなく、素直で自然な映像を楽しむことが出来ました。
感心したのは、FPDベンチマークの評価用映像で、情報量、コントラストレンジの広さ、色再現性とも優秀で、BRAVIAの大画面に見劣りしない端正な映像です。黒の沈み込みはこのクラスの液晶にして優秀で、艶があって色付きの少ない美しい黒を描き出します。
M1シリーズは、2月に同時発表の大画面のJ1、V1と同じ「ブラビアエンジン2」を搭載しています。ブラビアエンジンはS-LCD(サムソンと合弁で立ち上げた液晶パネル製造会社)製パネル搭載と同時に誕生した統合型高画質回路で、どんなデバイスを使ってもソニーがイメージする映像を表示することが狙いです。
昨年のプレミアムシリーズX、Wに新たに「ブラビアエンジンプロ」を採用、今回の3機種では従来のブラビアエンジンの発展型であるバージョン2が新たに搭載されました。同社大画面に比較しても世代的により新しい映像回路がM1シリーズに搭載されたわけです。
ブラビアエンジン2の改良点は、カラーエンハンス(緑、青、白の補正)とダイナミックコントラストで、後者は映像をフレーム(コマ)ごとに解析し、明るさの分布を監視してコントラストを制御します。また、映像の動き成分とノイズ成分は判別が難しいのですが、それを分離して認識しることが出来、ノイズ成分だけを低減します。
最新の映像プロセッサーを搭載した結果、「看板商品」の大画面と、乱暴に言えば「飯の種」のようなビジネスモデルの小画面の間に、画質の断層があまりないのです。もちろん、フルハイビジョンとハイビジョン対応の違いがありますから決して同じ画質ではなく、上位機ほどのきめ細かさは味わえませんが、小なりともソニーのテレビらしい鮮鋭感豊かでバランスのいい映像を楽しめます。
あえて改良を望むと、画質モードボタンをなくした「シンプルリモコン」になり、いったん画面を中断してソニー自慢のクロスメディアバーを表示させての調整になった結果、ダイナミック、スタンダード、シネマ、フォト、ビデオ、テキストといったモードの切り替えや、ピクチャー、色の濃さといった画質調整が瞬時に出来ないことが挙げられます。私はこれが「シンプル」になったとは到底思えないのですが、いかがでしょう。
本体へのXMB(クロスメディアバー)搭載で機能を整理した「シンプルリモコン」(RM-JD017)を採用した。操作のシンプリティへの貢献度について、筆者は??? |
また、せっかく、上位機同様の「フォト」画質を搭載したのですから、メモリースティックやSDカードをダイレクトに挿せないのは残念です(本機はPCと接続してデジタルフォトデータの表示になります)。
VA方式パネルなので水平垂直の視野角はやや狭いようです。設置に融通性を欲しくなりますが、カラーベゼルと一体化したデザインのM1にスイーベルを望むのは野暮なものの、チルト範囲(+7~15度)はやや物足りず、一定の角度で固定がし辛くやや使いにくい面があります。
重箱の隅を突くようなことを書きましたが、ソニーのテレビらしい手抜きのない画質にプラスアルファの価値は十分と見ました。一週間弱の預かり期間の間、家族にすっかり親しまれて「これ、返しちゃうの?」と娘が悔しがったKDL-16M1です。皆さんのご家庭やプライベートルームにもたちまち溶け込むことでしょう。
【関連リンク】
・ソニーブラビアホームページ