アンプと5.1ch分のスピーカーを内蔵
テレビ置き台とさえ一体化する合理性
ヤマハのデジタルサウンドプロジェクターにこの1月、新製品が加わりました。私はこのサイトをご覧のみなさんには、単体のYSP-3000よりテレビ置き台とあらかじめ一体化されたYSP-LC3000、YSP-LCW3000をお薦めしたいと思います。その理由は、単体の製品と2種類のラック一体型システムの価格がわずか3万円しか違わないからです。YSP-3000 予想実売価格:120,000円 21個の小径ドライバー(スピーカーユニット)を5個一組でドライブし、強い指向性の音のビームに変え、部屋の側壁や後方の壁から反射させてリスナーの周囲にサラウンド音場を生み出す。アンプも内蔵されているから、テレビとYSPをHDMIで接続すればミニマムホームシアターが出現する |
ヤマハのデジタルサウンドプロジェクターはわかりやすく言うと、アンプと5.1チャンネルのスピーカーがワンピースのパネルに一体型された製品です。テレビと基本的に二つの要素だけで、リビングでDVDやブルーレイのソフトを「映画らしく」楽しみことができます。
デジタルサウンドプロジェクターの最大の特長は、後ろにスピーカーを置かずにサラウンド(立体音場)を楽しめることです。
一般的にこれをフロントサラウンドと呼び、さまざまな方式の製品が発売されていますが、ドルビー・バーチャルに代表される人間の聴覚特性を利用したフロントサラウンドと違い、ヤマハのデジタル・サウンド・プロジェクターは実際に5.1チャンネルをスピーカーから再生します。それぞれの音は、前方の一箇所から出ますが、リスナーの左右、あるいは後方から聴こえるように工夫されています。
YSP-3000(YSP-LC3000、YSP-LCW3000)の場合、長方形のボディの前面バッフルに21個の小型スピーカーが並んでいます。それが5個一組で強い指向性を持った音のビームを形成して部屋の側壁や背後の壁に音を反射させ、あたかも5.1チャンネル分のスピーカーがそこに置かれているように感じさせるのです。
ユーザーがテレビを見る部屋の広さや、形状、壁の材質は千差万別なので、「それで、ホントに効果が得られるのか」とお思いになるかもしれませんが、デジタルサウンドプロジェクターの場合、付属の測定マイクで設置時にビームの角度や音量バランス、ディレイ(音の遅延速度~反響の深さを決定する)を自動調整さえすれば、後はどんなソフトを再生しても最適の状態でサラウンドが楽しめます。
YSP-3000のシルバーバージョン。マイクとソフトウェアで部屋の環境を測定しビームの強さや角度を自動調整する「インテリビーム」機能を持つため、片側が開放になっているような変形間取りのリビングでも、サラウンド音場を楽しめる |
横長ワンピースのボディをそのまま
テレビ置き台と一体化したコンセプトの明快さ
YSPシアターラックシステムはこれで全5機種と充実しました。テレビ置き台とホームシアターシステムを一体化した製品は初めてではありませんが、YSPほどの成功を収めていません。他の製品は、本来なら左右とセンターに分離したスピーカーシステムのエンクロージャー(キャビネット)を横長に一体化して、上にテレビ、支持部分にソース機器を収納するように一体設計しています、YSPの場合、最初から横長のパネルですから、それをテレビ直下の音響上もっとも効果的な位置に置くと、そのままラックシステムが出来てしまいます。
他のシステムが一般的なスピーカーシステムを、タテをヨコに変えてラックに押し込めたのに対して、YSPは元来の形状がラックシステムというソリューションにピタリ一致、セッティングの理に適っています。その違いをエンドユーザーは直感で理解したのではないでしょうか。
YSP-3000をラックに収めたYSP-LC3000(予想実売価格¥150,000)リビングルームに設置したイメージ。薄型テレビとワンピースのサラウンドシステムが創り出す世界でもっともコンパクトでシンプルなホームシアターである |
ホームシアター先進国のアメリカには、CI(カスタムインスタレーション)という日本にはない産業があります。視聴覚設備や家庭内LANを住宅に設備化していく業種で、北米だけで大小数千社が存在するといわれる一種のソリューションビジネスです。
このYSPラックシステムは、楽器、オーディオから住宅設備まで手掛ける唯一のメーカー・ヤマハの手になる、世界で最もコンパクトにまとめられた、日本に向けて提案されたCIの好例ではないでしょうか。
次のページでは、YSP-3000と組み合わせて使うラックシステム、YSP-LC3000、YSP-LCW3000をご紹介しましょう。