金沢の名料亭で10年修業そんなご主人が営む市場食堂
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「こぞくら定食」900円。“こぞくら”とはブリの幼魚のこと。関東ではイナダ→ワラサ→ブリと出世するが、石川ではコゾクラ→フクラギ→ガンド→ブリと出世。煮付けの味付けも上品。締まった身に味がしっかり染みこんでいる。脂ギトギトではなく、しっかりと白身魚の味を楽しめる逸品。魚好きの人にこそおすすめのメニューだ。 |
「この食堂は母が経営していたんですが、ある時、ここをやめようと思っている、と打ち明けられて。それはもったいないと、店を継ぐことにしたんです」10年も修業したのだから、料理屋を開こうと思ったことはなかったのかと聞くと、「もうそれから10年経ちましたけれど、一度もないですよ。これが気楽な商売でして。浅田屋では注文を間違えたら怒鳴られますが、ここでは誰も怒らない。たとえ刺身定食とカレーライスを間違えてもね(笑)」 営業は昼、夜の二部制だが、いい魚が入らなければ休んでしまうこともある。 「だってお客さんに“今日はイマイチだね”なんて言われたくないから(笑)。いい魚が入らないということは、市場もヒマということだし」
アタリはずれが大きい市場食堂ですが、こちらは正真正銘のオススメ店!
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「海鮮丼」1,000円。具材は当日の仕入れにより変動。この日は、右の刺身盛りと同じ5種にタコなど3種を追加した8種。ちなみに、マグロは金沢市中央卸売市場の仲卸に勤める実兄から仕入れている。漬け物、みそ汁付き。 |
金沢といえばこれからの季節、ズワイガニの水揚げもあるが……大谷さんはこういった高級品にも興味はない。「だって市場食堂とカニは不釣り合いでしょう。1杯1万円もするカニ、出せるわけないし(笑)。香箱(こうばこ)ガニ(セイコガニとも呼ばれるズワイガニのメス)が安いときには仕入れるけれど、ごくたまに。ここではもっと安くて美味しい、旬の魚を楽しんでほしいんですよ」店名は「船員厚生食堂」だが利用は誰でも可(市場見学は一般者不可)。最近では金沢市街のサラリーマンや、OLの利用も多いそう。旅慣れた読者のみなさんならばご存じだと思うが、「市場食堂」には正直言って当たりはずれがかなりある。ここで紹介するからにはもちろん、こちらは“アタリ”のお店。安心して、お出かけを!
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