「日本食は、まず米のご飯ありき。」
田んぼを指定して仕入れるこだわりの米
米はもちろんのこと、味噌、醤油などの調味料、昆布や鰹節といっただし素材まで、底力のある本物にこだわっている。 |
「日本食は、まず米のご飯ありき。ご飯やみそ汁が美味しいからこそ、おかずも引き立つと思うんです」
そう語るご主人が選んだ米は、宿から車で30分ほどの、長野県・旧北御牧(きたみまき)村、八重原地区のコシヒカリ。旧北御牧村は、米どころとして名高い魚沼を流れ抜ける信濃川の上流、千曲川の源流部にあたり、信州でも米の美味しい地域として知られている。
そのなかでも八重原は特別なエリア。保水性の高い強粘土質の土壌で、蓼科山の伏流水を引いて作られるその米は、甘味、ツヤ、粘り──どれをとっても、魚沼産コシヒカリの特級品と比べてまったく引けをとらない。生産量が少ないため、ほとんどが料亭などに直行する貴重な米なのだ。三水館では、穫れる田んぼまで指定した米を仕入れているという。
千曲川源流部の清水で
育てられた米を、山の清水で炊く
献立には季節の食材が満載。秋には、ご飯ももちろんだが、きのこを使った料理も見逃せない。 |
「独学ですから」と言いながらも、ご主人の研究熱心さはすごい。料理の腕前はぐんぐん上がり、今では立派な板前? |
「最後に味を左右するのはやっぱり炊く水。まろやかな水でないと甘みが出てこない。このあたりの水道は少し硬いから、山奥の清水で炊かないと本当の米の味が出ないんです」
滝沢さんの1日は、野草採りと水汲みにほぼ費やされてしまいそうだ。ただ、この地道な苦労が料理を支えているのも事実。
「東部町にも気になる米があるんだよね」
たかがご飯、されどご飯。滝沢さんのこだわりはまだまだ続くのである。
■三水館 【長野・鹿教湯温泉】